双葉再生!決意の「壁画」 アートの力でネガティブ印象変える

 
アートで双葉の再生を目指す(右から)赤沢さん、高崎さん、山本さん=9月22日、双葉町

 「HERE WE GO!!!」。双葉町のJR双葉駅東口広場に立つと、「ここからもう一度進むんだ」という強い決意が込められた英文と、地面を指さす左手の壁画が目に飛び込んでくる。壁画を完成させたのは「アートで双葉を再生させたい」と考えた同町の関係者ら。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から間もなく10年を迎える同町で、何かが始まる。

 左手親指と英文の間には「JOE'SMAN(ジョーズマン) SINCE2009 キッチンたかさき」の文字。

 壁画が描かれたのは、地元に愛された洋食店キッチンたかさきの跡にある塀。ジョーズマンはキッチンたかさきのそばにあった居酒屋だ。2009(平成21)年9月に開店したが、原発事故で避難を余儀なくされた。

 ジョーズマンを経営していたのは同町の高崎丈さん(39)。両親が営んでいたキッチンたかさきの近くに店を構えていたが、現在は東京都でジョーズマン2号を開いている。

 以前、オランダを旅したことがある高崎さんには「アートで双葉を再生させ、原発事故というネガティブな印象を変えたい」という思いがあった。同国には、廃虚だった広大な造船所跡地をアートで再生し、芸術家や起業家らが集まるようになった場所があり、志を抱くきっかけとなった。

 思いを後押ししたのは、企業や飲食店の理念などを壁画で表現する会社「OVER ALLs(オーバーオールズ)」(東京都)との出合い。6月、ジョーズマン2号を訪れたオーバーオールズ社長の赤沢岳人さん(38)が「よそ者かもしれないけど、とにかくやろう」と高崎さんの思いに共鳴した。

 8月上旬、赤沢さんや副社長の画家山本勇気さん(40)らが、高崎さんの思いや現地で感じたことを受け止め、縦約2メートル、横約7メートルの塀に「HERE WE GO!!!」などを描いた。これが、双葉をアートの街にするプロジェクトののろしとなった。

 9月22日、双葉駅前には次の壁画制作の打ち合わせをする高崎さんや赤沢さんの姿があった。普段は事務所や飲食店を完成させるために描くオーバーオールズだが、今回は違うと山本さん。赤沢さんはこう考える。「始まるために描くのかな。何か始まるぞって」

 プロジェクトでは、協力者を募りながら、町内で壁画を描いていく。次の壁画制作は6、7の両日、同駅前で行われる。

 高崎さんは「双葉を変えるのは簡単ではない。それでも、アートには思っている以上に可能性がある。双葉は格好いい街だと胸を張って言えるようにしたい」と新しい古里の姿を思い描く。