大熊の未来!大きく表現...『理想のまち』 専門家アイデア導入

 
生き生きとした表情で巨大絵画を描く大熊町の小学生ら

 東京電力福島第1原発事故により会津若松市で授業を続ける大熊町の熊町、大野両小は5日、版画家の蟹江杏さん(東京都)を招き一緒に理想のまちを描く授業を両校で行った。

 蟹江さんは自然を女性の姿で表現し、両校の児童9人が女性の周りに鳥やまちを描いた。子どもたちはこの日に向け、7月から体験型講座を重ねて表現力を育んできており、約3時間で大作を完成させた。作品は子どもたちの数にちなみ「大熊町の9羽の鳥たち」と名付けられた。活動の内容は年度中に書籍化される予定だ。

 「教育応援団」組織へ 専門家との授業、書籍化し発信

 大熊町教委は、画家や写真家、児童文学作家などでつくる「おおくまの教育応援団(仮称)」をつくる方針を固めた。それぞれの専門家が持つアイデアや技術を教育現場に導入し、大熊町独自の少人数教育の特色にしていく狙いだ。木村政文町教育長は「一流の人材に子どもたちが関わることで、将来の可能性を広げることができる」と述べ、町の将来を担う子どもたちの教育環境の充実に意欲を示した。

 会津若松市で5日に行われた、版画家の蟹江杏さん(東京都)による「みんなの町を描いてみよう」と題した授業は、教育応援団の活動のモデルケースとして注目された。授業には熊町、大野両小の児童9人が参加し、蟹江さんの指導で理想のまちを思い思いに描いた。

 「星を描きたい」「虹色の花火も」。縦2メートル、横4メートルの大きなキャンバスを前に、児童らは想像力を膨らませた。蟹江さんが一人一人の言葉に「いいねえ」と答えると、子どもたちは笑顔を返した。筆を握った手を大きく伸ばしたり、指や手のひらで直接色を重ねたり、体全体を使ってキャンバスに向き合った。

 そんな子どもたちに蟹江さんは「絵の具が手についてもいい、小さくまとまらないで」とアドバイスを送った。3時間近くかけて完成した作品に、5年の女子児童(10)は「みんなの気持ちがこもっている感じがする」と満足そうな表情を浮かべた。

 今年7月から児童に接してきた蟹江さんは「自分の描きたいもの、色、線を表現できるようになった」と子どもたちの変化を語る。さらに、絵や音楽によって育まれる「想像力」が大切だという。「どうして人に優しくしなくてはいけないのか。それは想像力がなければ、分からない」と語り、子どもたちの成長に笑みを浮かべた。

 町教委は、蟹江さんらのネットワークを通じて、応援団に参加する専門家などの人選に入る。それぞれの専門家と子どもたちが取り組んだ授業の成果は、本や電子書籍などにまとめ、全国に発信する予定だ。

 大熊町の教育を巡っては、2022年4月に、小中9年間で一貫した教育を行う「義務教育学校」を避難先の会津若松市で開設する。翌年4月には、町大川原地区に新設する教育施設に移転する予定になっている。町教委は、「応援団」のアドバイスなどを受けた魅力ある教育カリキュラムを確立することで、一人でも多い児童、生徒の受け入れを目指す。