【東日本台風1年】企業 「水害ない場所に」対策に限界、不安強く

 
復旧した倉庫で被災当時を振り返る安藤社長。コロナ禍も影を落とす中、再び起こり得る災害への不安は拭えていない

 「台風がくるたびに皆、気が気でない思いをしている。早く水害のない安全な場所にしてほしい」。新たに台風14号の接近も懸念される中、郡山市で8日に開かれた郡山中央工業団地会の会合後、小川則雄会長(72)は立地する企業関係者の思いをそう代弁した。

 移転や廃業選択

 昨年の東日本台風(台風19号)で、立地する約280社の大半が浸水被害を受けた同団地。この日の会合では丸1年が過ぎようとする今も、被災した企業の約1割に当たる22社が事業を全面再開できていなかったり、同団地での再開を断念して市外への移転や廃業を選択したりしたという調査結果が示された。

 調査を行った市によると、企業からは新型コロナウイルス禍でサプライチェーン(部品の調達・供給網)が寸断され生産設備がそろわないことが全面再開の障壁となっているとの声が多くあるという。

 一方、事業を再開した企業にとっても、再び起こり得る大規模水害への不安は根強い。団地近くを流れ、堤防の決壊が大きな被害を招いた谷田川では、堤防整備や流量を増やすための掘削工事が進むが、工事完了は「おおむね5年後」の見通しだ。団地内で建設・土木資材の販売などを手掛ける東栄産業の安藤秀機社長(34)は「できる限りのことはしたつもりだが、一企業の対策では正直限界がある」と胸中を語る。

 浸水による被害額が4億円超に上った同社は、復旧作業と併せて荷物置き場のかさ上げや水害発生時のマニュアル作りなど対策を講じてきた。2月にはようやく全面再開にこぎ着けたが、不安は残ったままだ。台風後に市が新設した補助制度を使い、水害の恐れが少ない別の工業団地に移転することも検討したが、断念した。

 続く売り上げ減

 コロナ禍による売り上げ減少も続く中で「いくら補助があるといっても、この状況でさらに自己資金を捻出して移転するというのは現実的ではなかった。通勤環境が変わるなど、従業員にも負担を掛けてしまう」。安藤社長はこの1年、さまざまな局面で葛藤を続けてきたという。

 台風の被害は地価も押し下げた。9月末に発表された調査結果では、団地内の工業地価格の下落率が全国一になるという結果が出た。小川会長は「元に戻るには長い時間がかかってしまう」と述べ、治水をはじめ防災対策の強化の必要性を改めて強調した。

 県内の商工関係被害929億円

 東日本台風による浸水被害などで県内では多くの事業所が被災した。県のまとめによると、商工関係の被害額は約929億円に上る。特に大きな被害のあった郡山中央工業団地は、郡山市の調査(速報)によると立地企業約280社のうち272社が被災、被害額は計528億1400万円に上っている。