【東日本台風1年】リンゴの『縁』...実を結ぶ 須賀川の果樹園

 
苦難を糧に前進する小松さん。被災から1年がたとうとする果樹畑では、リンゴが赤く色づいていた=4日、須賀川市

 昨年10月の東日本台風(台風19号)による記録的大雨と河川の氾濫で、県内農地は大きな被害を受けた。台風上陸から12日で1年。復旧が進んだ被災地の田畑には、変わらず秋の実りが輝く。再び水害に襲われるかもしれない。そんな不安も抱えながら被災農家は前に進む。

 阿武隈川の氾濫で広く田畑が浸水した須賀川市浜尾地区。被災したこまつ果樹園の小松純子さん(50)の畑には、赤く色づいたリンゴがたくましく実っていた。

 昨年の東日本台風では自宅や果樹園が川からあふれ出た泥水に覆われた。水が引いた畑には稲わらや泥、ごみが流れ着き、木から落ちた収穫間近のリンゴで地面は赤く染まっていた。多くのリンゴが水に漬かり、出荷できるような状態ではなかった。「この先やっていけるのか」。不安が募った。

 しかし、落胆した小松さんの背中を押してくれたのもリンゴだった。「復興のためにも、浜尾のおいしいリンゴを売ろう」。地区の農家で被害を免れたリンゴを「ガンバりんご」と名付け、販売する活動を始めた。家屋や畑の片付け、リンゴ販売のために多くのボランティアや知人らが駆け付けてくれた。リンゴは全国の消費者の元に届き、人の縁を紡いでいった。

 今も倉庫には浸水の跡が残り、水没した加工場の復旧は見通せない。しかし畑はおおむね元の状態に戻り、果樹園にはたわわにリンゴが実る。小松さんは「今年は上々の出来」と安堵(あんど)する。苦しいときに手を差し伸べてくれた人たちへの恩返しとして、九州などに被害が出た今年7月の豪雨災害の被災地に義援金や果物を送っているという。

 「またあの台風が来たら今と違う道を探すしかないかもしれない」と、不安は拭えない。それでも小松さんは「台風を機に交流の輪が広がった」と前向きに捉える。地域住民との交流は密になり、知人らも交えた収穫体験会を催すなど、新たな取り組みも始めた。台風の被害があったからこそ、地域のつながりの大切さや地域活性化への可能性に気付くことができたと思い始めている。

 「以前は近所にどんな人がいるのか分からなかった」という小松さん。「日々のコミュニケーションが大切。人と人とのつながりもライフラインの一つだと思う」。苦難を糧に小松さんは今日もリンゴと向き合う。