コメ農家、落胆と苦悩 コロナ余波で米価下落、飼料用転換進まず

 
収穫前の稲を見つめ、「おいしいコメを作り続けてきたという意地もある」と話す新田さん=8日、喜多方市

 新型コロナウイルス感染症拡大で主食用米の需要が全国的に減り、県内のコメ農家も大きな打撃を受けている。JAが農家に仮払いする本年産米の概算金が6年ぶりに引き下げられ、買い取り価格も低迷。国や県は農家の収入確保を目的に飼料用米への転換を進めるが、農家は家庭の食卓を支えてきた誇りから簡単には転換できず、苦悩している。

 「300万円ぐらいは収入が減る見込みだが、もっと下がるかもしれない」。喜多方市の農業法人「夢ファームむげん」社長の新田義智さん(62)は落胆の色を隠さない。同法人は31ヘクタールの水田でコシヒカリや酒米など7品種を栽培している。法人化して3年目、低農薬の栽培などにこだわってきた。コロナ禍で価格の下落は覚悟していたが、下落幅は想像を超えていた。

 JA会津よつばによると、本年産米は、品種にもよるが買い取り価格を1俵当たり1100~1600円引き下げた。近年は国内の需要が堅調だったため価格は比較的安定していたが、コロナの影響で消費しきれない昨年産米が積み上がっており、担当者は「取引先も昨年産米を抱えているため、販売するのも厳しい」と話す。

 主食用米の価格下落を抑えようと県も対策に乗り出している。飼料用米に3年以上転換する場合、農家に10アール当たり5000円を補助することを決めるなど供給過多な主食用米からの転換を促すが、会津地方を中心に、思うように切り替えは進んでいないという。

 県や同JAによると、会津地方の収穫量(反収)は約10アール当たり平均600キロで、県内のほかの地域よりも多い。そのため飼料用米に転換し、補助を受けても現在の収入が維持できない可能性があるという。食用米の栽培にこだわりを持つ専業農家も多く、簡単には転換に踏み切れないケースもある。

 全国のコメの需要は年間10万トン程度の落ち込みが続いており、今後もコメ余りは続く。新田さんは「コメどころの喜多方でおいしいコメを作ってきた意地があるが、これ以上厳しくなるなら、飼料用米も考えないといけないのかな」と、寂しげに語った。

 福島県内在庫12万4000トン

 全国の主食用米の民間在庫は6月末時点で201万トン(前年度比12万トン増)に上り、県内では12万4000トン(同2万4000トン増)の在庫を抱える。特に県内は業務用米の割合が高く、新型コロナウイルス感染症の影響で外食などへの販売が低迷したあおりを受ける。

 全国的にコメ需要量の減少が続く中、追い打ちをかけるコロナ禍による需要減。県内の各JAは生産者に仮払いする「生産者概算金」の基準となる2020年産米の「JA概算金」について、コシヒカリなどの主要銘柄を6年ぶりに引き下げ、19年産比で2.5~5.7%程度の下落となった。