【コロナ差別No】感染者の思い 「周りが迷惑」...仕事辞めた

 
春先に感染した県内在住の30代女性。「支え合って生きる世の中になってほしい」と願う

 最初の異変は夕食の支度をしている時だった。

 春先に新型コロナウイルスに感染した県内在住の30代女性。うどんを作っている途中、汁の味見をしても味がしない。「しょうゆ、入れたよなあ」。鼻が詰まっていたので風邪だと思ったが、味覚・嗅覚に異常が現れる感染者がいると知り、まさかと思った。「もしかして私も、それ?」

 数日後の日曜日、激しいせきと強烈なだるさに襲われた。肺がつぶれそうなほど苦しく、未就学の一人息子がいなければ布団から一歩も動きたくないぐらい体が重い。熱を測ってみると36度4分。体温計が壊れているのかと思った。

 翌日から介護職の仕事を休み、医療機関を2度受診した後に判明したPCR検査の結果は陽性だった。「熱がないのに陽性なわけないじゃん」。検査ミスだと思った。重症化せず、1週間ほどで退院した。

 だが、退院後に同僚から届いた無料通信アプリLINE(ライン)のメッセージに言葉を失った。「具合が悪い時はすぐに言ってください。周りが迷惑するので。よろしくお願いします」。職場は消毒などで一時営業休止となっていた。「私がコロナになったイコール迷惑なのね」。悲しくて涙があふれた。

 感染する前、一緒に食事をする機会があった前の職場の同僚にも感染を連絡した。その同僚が上司に報告すると、感染者という情報が瞬く間に職場内に広がった。「何で会ったの?」。同僚が職場でそう言われたことも聞き、心が痛んだ。

 移動範囲は家と職場と息子が通う保育園、それに買い物に行くスーパーぐらい。今でも、どこで感染したのか見当が付かない。「どこかで遊んでいたんだろ」。思い過ごしかもしれないが、そう責められている感じがした。結局、職場に行きづらくなり、仕事を辞めることになった。

 息子と別れよぎる

 新型コロナの全容が分からない中、感染者は症状によっては死ぬかもしれないという恐怖と、仕事や家庭など今後の生活への不安と闘っている。「自分の大事な人がコロナに感染した時、果たして同じことが言えるのかな」。女性は差別や偏見がなくならない現状を嘆く。

 入院時は「自分が死んだら息子と今生の別れだよなあ」と不安がよぎった。実家に預けていた息子と再会できた時、「生きて帰ってこれてよかった」とほっとしたのを覚えている。

 県内で初めてコロナ感染者が確認されて約8カ月。感染者は400人に迫ろうとしている。「私より、もっとつらい差別や中傷を受けた人は多いと思う。どれだけ差別が悪いことだと発信しても、変わらないかもしれない。でも、みんなで支え合って生きる世の中になってほしい」。女性はそう願っている。

 1週間の入院生活

 「無言の世界に1人でいるような感じだった。考える時間がたくさんあり、不安になった」。前述の新型コロナウイルスに感染した県内在住の30代女性は孤独な入院生活をそう振り返った。

 女性の症状は味覚・嗅覚異常やせき。熱はなかったが、処方されたのはせき止めと解熱剤。入院後、吐くほどの頭痛が襲い、入院して2日目の朝食が来るまで胃液を吐き続けたという。

 病室は室内の空気が外に出ない陰圧室。最初の2~3日間は缶詰状態だった。食事は使い捨て容器に盛り付けられ、食べ終わると室内の専用ごみ箱に捨てた。除菌用のウエットティッシュがあり、触ったところを自分で拭くよう看護師から説明があった。テレビやトイレ、風呂もあり、病室から一歩も出ることなく過ごせるようになっていた。

 看護師は防護服や手袋を着けたりするため、陰圧室に入るだけで10分ぐらいかかった。大変だと思った女性は自分で体温を測定してナースコールで報告するなど看護師をなるべく呼ばないようにしたという。スマートフォンやタブレット端末、ポケットワイファイを持ち込み、一人息子とテレビ電話で会話をした。

 3日目にフロア全体が陰圧された病棟に移動した。移動は透明なビニールに覆われた車椅子で、自分の呼吸が"ろ過"されて外に出るような仕組みだった。病棟には洗濯機と風呂場があり、風呂に入りながら洗濯し、部屋で服を乾かした。

 味覚・嗅覚異常は入院後も続き、食事しても「プラスチックを食べているようだった」。4日目の夜ごろから、ようやく味を感じるようになった。5日目の夜に「味がします。検査できそうです」と報告。その後、PCR検査で2度陰性となり、退院した。

 「1人で考える時間が多く、治療に専念したいが不安が募る。誰かと話をしていればいいが、そういうわけにもいかない」。面会を禁止され、孤独を感じた。不安定な心理状態に陥る入院生活の大変さはあまり知られていない。「患者の苦労や苦悩を知ってもらうことで、少しでも差別や偏見がなくなってほしい」。回復した今、女性は思いを吐露した。

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 新型コロナウイルス感染者に対する差別や偏見が社会問題となっている。誰もが感染者になり得る「ウィズコロナ」の時代。差別や偏見をなくすためには何が大切か。感染者らの思いから考える。