【コロナ差別No】口閉ざす感染者 行動歴、個人特定の恐怖

 
感染者への聞き取りは主に電話で行われる。誹謗や中傷を恐れ、口を閉ざす人も少なくない

 県内での新型コロナウイルス感染確認を受け、インターネットでライブ中継される県の記者会見に、ウェブ上では厳しいコメントが相次ぐ。「県外滞在歴、海外渡航歴もなく感染経路がはっきりしない」「これで記者会見をする意味があるのか」「どう予防すれば良いのか分からない」。県が公表する情報量の少なさを指摘する声が大半だが、差別や偏見を恐れる感染者が口を閉ざす現実もある。

 濃厚接触者も動揺

 「陽性が判明したと言われたら、どんな人でも頭が真っ白になるんですよ」。これまで100人以上の陽性者らの聞き取りに携わってきた会津保健福祉事務所職員の新妻亮直さん(52)は指摘する。入院すら断る人、家族や仕事など先行きが見通せず涙する人もたくさんいた。

 聞き取りの一番の目的は感染を拡大させないことだ。感染者に寄り添い少しずつ進めるが、「どこにも行っていない。ずっと家にいた」と口が固くなる感染者も多く、歯がゆさを感じることがあるという。

 「誹謗(ひぼう)や中傷が怖いのもあるし、動揺もしている。後ろめたさもあるのかもしれない」。新妻さんは、情報が公開されることで本人が特定され、知られたくない内容まで広く伝わることを嫌がる感染者の思いを代弁する。濃厚接触者になった人は感染者と同じぐらい動揺が大きく、「家族が仕事や学校に行けなくなるので濃厚接触者にしないでほしい」と懇願されたこともあった。新妻さんは「濃厚接触者は『優先的に健康観察する人』という意味なのに、悪いイメージが先行している」と危惧する。

 誰しもパニックに

 「感染者への寄り添いと感染源の探索・拡大防止という二つの要素をてんびんにかけながら対応に当たっている」。新型コロナを含め感染症に携わって約8年。同事務所職員の川島眞澄さん(58)は、感染を広げないための情報を得ようと感染者との信頼関係の構築に時間をかける。「あなたを守りたいし、あなたの大切な人を守るためには、どうしてもここだけは教えてほしい」。説得には粘り強さが不可欠だ。それでも口を開いてもらえず、買い物のレシートから行動歴を把握したこともあった。

 「私たちが知っている感染症は、生活にそれほど支障がなさそうな疾患だった。だが、新型コロナは(差別や偏見などを恐れ)精神的にきつくなる。誰しもがパニックになる」と川島さん。結核や新型インフルエンザなどとは全く違う影響に脅威を覚える。「新型コロナは人とのつながりを壊しかねない。だからこそ人とのつながりを切らない世の中が大事なんだと思う」。誰しもが感染者になり得る状況の中、誹謗・中傷をなくすには絆の強さが大切だと感じている。