【コロナ差別No】誹謗中傷の背景 社会的不安...見下す姿勢に

 
「一人一人の感覚づくりが求められる」と話す筒井教授

 「新型コロナウイルスに感染するよりも感染後に個人情報がさらされ、誹謗(ひぼう)中傷の対象になる恐怖の方が大きいのではないか」。心理学が専門の筒井雄二福島大教授(56)は、「コロナ差別」が後を絶たない現状をこう分析する。

 エイズやハンセン病など、これまでも感染症患者への差別や誹謗中傷はあった。歴史を繰り返すように新型コロナの感染者を推測・特定したり、誹謗中傷する行為が相次ぐ。差別や誹謗中傷は、感染者に二重の苦しみを与えることにつながる。それでもやまない背景には、自分と他人を比べる心理である「社会的比較」や「自己肯定感」があるという。

 感染症が流行すると閉塞(へいそく)感や社会的不安、感染への恐怖で他人を見下す姿勢が顕著になるという。「感染者を攻撃対象とし、感染していない自分を偉いと認識することで心の健康を保っている」。筒井氏はそう指摘する。

 会員制交流サイト(SNS)の匿名性もコロナ差別を助長させた。「○○が感染したらしい」などと投稿し、「いいね」と評価されることで快感情が刺激され、自分の評価が高まったとの疑似体験に陥る。

 ネット上への情報の拡散が続けば、削除するのは難しい。SNSが差別や誹謗中傷の道具になっている現状に「利用者の無意識の追認行為が、誹謗中傷に加担していることを自覚しなければならない」と筒井氏は語る。情報統制や監視も解決策の一つだが、実行には「言論の自由」というジレンマがつきまとう。

 「コロナ差別に特効薬はなく、一人一人の情報倫理に尽きる」。筒井氏は家庭や学校、行政など、それぞれの立場で対策を講じることが重要とし、情報教育の必要性を強調する。「それぞれの立場で努力の方法はある。人々の協力が得られれば『差別を許さない』という感覚を広めることはできる」

 過去の反省から成功例を導く手法もある。「セクハラ」「パワハラ」といったハラスメント行為や虐待、体罰などは社会に問題意識が芽生えてきたことで考え方が大きく変わった。「かつては放任されたことも世の中全体で考え方を変えることは可能だ」と筒井氏は訴える。

 コロナ禍では、リモートワークや時差通勤の導入が進むなど生活環境が一変した。筒井氏はこうした環境変化の"副産物"の一つがコロナ差別だとみる。「試されているのはわれわれの倫理観。(SNS上で)自らの行動を自戒するような、今までにない感覚を育てていけばコロナ差別をなくせるはずだ」