柳美里さん全米図書賞 南相馬の男性描いた「JR上野駅公園口」

 
英語版の受賞作を手に受賞の喜びを語る柳さん=19日、南相馬市

 米国で最も権威のある文学賞の一つ、全米図書賞の受賞作が19日午前、オンラインで発表され、翻訳文学部門で南相馬市在住の芥川賞作家、柳美里さん(52)の小説「JR上野駅公園口」が選ばれた。日本人作家として2018(平成30)年に同部門で受賞したドイツ在住の芥川賞作家、多和田葉子さん(60)の「献灯使」に続く快挙となった。

 柳さんはオンラインの授賞式で笑顔を見せ「とてもうれしい。地震と津波、原発事故に遭い、苦難の道を歩んでいる南相馬市の人々と、喜びを分かち合いたい。この賞はあなた方のためのものだ」と語った。

 「JR上野駅公園口」は1964(昭和39)年開催の東京五輪の前年、家族を養うために東京に出稼ぎに行った南相馬市の男性の生涯を描いた物語。全米図書賞のウェブサイトでは「日本の近代化で多数の人が社会の片隅に追いやられ、無視されてきたことを読者は知ることになる」と紹介された。

 翻訳家モーガン・ジャイルズさんが英訳し、英題は「TOKYO UENO STATION」。米・タイム誌「2020年の必読書100選」、ポートランドの世界最大の書店パウエルズブックスが選ぶ「今年最高の翻訳文学」の一冊にも選出された。

 柳さんは横浜市出身。1993年に「魚の祭」で岸田國士戯曲賞、96年に「フルハウス」で泉鏡花文学賞、野間文芸新人賞、97年には「家族シネマ」で芥川賞を受賞した。

 震災翌年の2012年から臨時災害放送局「南相馬ひばりエフエム」で住民とのトーク番組(18年終了)を繰り広げ、15年に神奈川県から南相馬市原町区に移住、17年に同市小高区に転居した。18年4月には自宅に書店「フルハウス」をオープン。自身が主宰する演劇ユニット「青春五月党」も復活させ、住民やふたば未来高の生徒と書店に併設する小劇場で自作の戯曲を上演した。

 県民に感動と勇気

 内堀雅雄知事は「南相馬市で執筆活動を続ける柳さんの受賞は県民にとって誇りであり、震災後の苦難の中にある地元の人々と受賞の喜びを分かち合いたいと話す姿に大きな感動と勇気をいただいた。今後ますますの活躍を期待している」とのコメントを発表した。