浪江に「復興牧場」整備へ 酪農研究一大拠点、24年度完成予定

 

 浪江町と県酪農業協同組合が同町棚塩地区に整備を検討している「復興牧場」について、町が主導して牧場を整備する方針を固めた。8日開会した12月町議会で吉田数博町長が示した。

 酪農技術の研究機能も兼ねた牧場としては国内最大規模となる見通しで、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの農業再生につながり、酪農研究の一大拠点となることが期待される。

 町によると、町が整備し民間企業に牧場を貸し付ける公設民営とし、早ければ2024年度中の完成を目指す。計画する復興牧場の面積は24.7ヘクタール。東北電力から無償譲渡された浪江・小高原発の旧建設予定地の町有地などを活用する。

 乳牛の飼育頭数は1300頭を予定し、生乳生産量は年間1万トンを見込む。福島市にある県内最大の復興牧場「フェリスラテ」の約2倍の規模となる予定。

 整備事業費は100億円規模で、町は来年度当初予算案に関連予算を盛り込む方針。吉田町長は町議会で「事業着手に向け、福島再生加速化交付金の申請を具体的に進める」と述べ、国の交付金を活用する考えを示した。

 牧場では30人の雇用が見込まれ、町内の被災酪農家が中核を担う。ロボットやICT(情報通信技術)を活用した自動給餌(きゅうじ)装置や搾乳機器などを導入し、浜通りに新産業を集積する福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想を推進する考えだ。

 牧場で生産したたい肥を活用した耕畜連携で、農業の再生も図る計画。牛ふんを利用したバイオガス発電施設や新規就農者の研修棟なども設置するほか、矢吹町の全酪連酪農技術研究所の移設も検討されている。

 町は環境対策として完全密閉型のふん尿処理システムなど最新設備を導入するほか、牧場を防風林で囲って緑地を保存し、景観維持につなげることを計画している。

 ただ、牧場整備による環境悪化などの不安を抱える地域住民もおり、町は今後も住民との意見交換の場を設け、継続的な対話で不安解消に努めていく考えだ。

 本県の生乳生産量は、原発事故による酪農家の休業などで減少している。県酪農業協同組合によると、昨年度の生産量は約6万2700トンで、震災前の7割程度だった。組合は生乳生産量の減少に歯止めをかけようと、南相馬市で復興牧場の整備を模索したが、景観維持や水源確保の観点から断念していた。町と組合は広大な敷地と豊富な地下水がある棚塩地区が最適地として、町が地域住民に説明を続けていた。