柳美里さん「夜ノ森駅」執筆構想 全米図書賞受賞作の対なす物語

 
全米図書賞の受賞に伴い記者会見する柳さん=東京・日本記者クラブ

 芥川賞作家の柳美里さん(52)=南相馬市=が23日、東京・内幸町の日本記者クラブで記者会見し、全米図書賞(翻訳文学部門)を受賞した小説「JR上野駅公園口」の「対をなす物語」として「JR常磐線夜ノ森駅」の執筆構想があることを明らかにした。

 執筆時期は未定というが「原発事故で避難指示が出た地域で除染労働をするためにかり出されたホームレスが主人公になる」と構想の一端を披露した。

 柳さんはJR山手線が舞台の連作を発表しており「JR上野駅公園口」はシリーズ5作目。「JR常磐線夜ノ森駅」は、柳さんが温めている三つの執筆構想の中の一つで山手線シリーズの番外編に位置付けるという。

 富岡町のJR夜ノ森駅は原発事故で帰還困難区域になり、3月の常磐線全線開通まで立ち入りが制限された。「(原発事故から)時間がどんどん過ぎていく。『夜ノ森駅』の物語を書きたい」と意欲を示した。

 柳さんは、自身が店長を務める書店「フルハウス」のカフェが今月から営業を再開した経緯も紹介。新型コロナウイルス感染拡大で住民が孤独感を強めていると指摘し「地元の人にカフェで温かい料理を食べてもらい、親密さを感じてほしい」と思いを口にした。コロナ禍を経た社会に向け「コロナ禍があぶり出したひずみや不公平がそのまま残るのではなく、気付いた人たちがそれらを解きほぐし、編み直す社会になればいい」と願いを語った。