福島で複数クラスター...忘年会「自粛」 苦境立たされる飲食店

 

 新型コロナウイルスの感染拡大が続き、福島市で今月、複数のクラスター(感染者集団)が発生、市と市医師会は「緊急警報」を出して忘年会を控えるよう呼び掛けた。コロナ禍で苦境に立たされる飲食店。「短期間の休業要請でも出してもらえれば」。関係者からは先行きを不安視する声が漏れる。

 「居酒屋どうですか」。12月中旬の週末、午後8時すぎ。飲食店などが並ぶJR福島駅前の通りで飲食店関係者が通行人に声を掛けた。だが、ほとんどの人は立ち止まることなく歩いていく。「12月に入ったころは5、6組は応じてくれたけど今はせいぜい1組。やっぱり、あれが影響しているのかな」。女性は声を落とした。

 市内では12日に、忘年会を発端とするクラスターが判明。その後、感染者が増えた。女性は「クラスターが出てから人の流れががらっと変わった」と話す。

 通り沿いの飲食店から出てきた前掛け姿の男性(20)。副料理長を任されているが、客が少なく、心配になって様子を見に来た。「今日は客が数人。仕入れた食材が駄目になってしまう」。この地で一旗揚げようと他県から来て新規オープンしたばかりだ。

 感染拡大を受け、東京都などは飲食店などに営業時間短縮などを要請した。協力した店には協力金が支払われる。県内で同様の要請は出ていないが、一部から休業要請などを求める声も出ている。福島社交飲食業組合の高橋光子組合長は短期間の休業要請を出してもらえるよう、県議に働き掛けているという。業界全体で客の利用を一時的に止め、感染拡大に歯止めをかけたい考えだ。「今のままだと食べていけない。福島の明かりがなくなってしまう」と危機感を募らせる。

 夜の繁華街ひっそり 対策万全でも...客まばら

 飲食店などが集まる福島市のパセオ通り。週末でも人通りは少なく、ひっそりとしている。居酒屋では入店時に手指の消毒と体温確認を求められ、席に着くと注文より先に連絡先と名前を聞かれる。「こんな時期なので万が一感染者が出た場合のために協力をお願いします」。店員は申し訳なさそうな表情を浮かべた。

 数十席ある店内にいるのは4組。1~3人と少人数だ。客の大きな声は聞こえてこない。テーブルの上には透明の仕切り板が設けられ、店員が小まめに消毒をしていた。

 約1時間で来店した客は3組ほど。「市内でクラスター(感染者集団)が発生してからは、ずっとこんな感じ。大人数の忘年会は全てキャンセル。仕方ないですけどね...」。男性店主(43)は肩を落とした。開店から7年近く。これだけ客の少ない年末は初めてという。

 経営への影響は大きい。「(時短要請などによる)協力金はないよりはあった方がいいが、一時的なもので根本的な解決にはならない。このままではとてもじゃないが、もたない」という。

 別の居酒屋の男性店主(64)も苦境にあえいでおり、「行政には一刻も早い決断を求めたい」と対策や支援の必要性を訴えた。

 不動産業マーケッティングセンター(福島市)の調査によると、昨年12月~今年10月にかけて、市内中心部の飲食店舗は65店舗減り、過去30年で最少の772店舗になった。スナックやバー、居酒屋を中心に廃業などが相次いでいるという。「飲食店はそのまちの文化の一つだと思っている。経営的には苦しいけど、文化をなくすわけにはいかない。店側とお客で協力して乗り越えていかないと」。バーの男性マスター(42)は言葉に力を込めた。