途絶危機乗り越え...幻の『山木屋在来そば』復活 川俣の特産目指す

 
山木屋在来そばの実を手に「山木屋在来そばの栽培が地区の営農再開や地域活性化につながってほしい」と期待を込める村上会長

 川俣町の山木屋地区で古くから栽培され、栽培量が少ないことから"幻のそば"と呼ばれる「山木屋在来そば」の生産が来年度から本格化する。東京電力福島第1原発事故の影響で一時栽培できなくなり、系統が途絶える危機に見舞われた地区特産のそば。関係者は「原発事故を乗り越えたそばが、地区の新たな魅力になるよう期待したい」と願いを込める。

 山木屋在来そばは、実が小粒で細長いのが特徴。種皮がむけにくいことから、香りや風味が良い「ひきぐるみそば」などで食され、地区住民に親しまれてきた。

 地区の農家らが栽培し続けてきたが、原発事故で同地区が2011(平成23)年4月に計画的避難区域に指定されたことから、多くの農家が先祖代々の農地を手放さざるを得なくなり、生産が一時途絶えた。

 "復活"のきっかけは、あぶくま高原そば振興協議会の大千里(おおちり)義市会長(63)の一言。県を介して17年、川俣町の仲ノ内そば会の村上源吉会長(71)に「阿武隈地域のそば振興のため山木屋在来そばを活用してみては」と提案した。

 山木屋在来そばの存在をこの時に初めて知った村上会長だったが「山木屋地区のためにも栽培してみよう」と会員や同地区の住民らと共に復活に挑戦することを決めた。

 当時、山木屋在来そばの純系統は町内に残っておらず、頼みの綱は県農業総合センターに保管されていたわずか4キロの種子のみ。この種子を使って村上会長のほ場で17年に栽培に取り掛かったが、種まきの時期に長雨が重なるなど不運もあり、初年度は栽培の断念を余儀なくされた。

 翌18年7月、農地再生などを研究する「農研機構」の協力を得て、農地や生産性を上げるための肥料を選定して再び栽培。震災後初の収穫に成功した。19年以降、収量は増加し、今年は1000キロを収穫。来年度は倍増となる2000キロを目指している。

 仲ノ内そば会は、会員以外にも、同地区でそばの栽培に乗り出す農家に種子を配布し、地区一体となって栽培を進めていく考え。

 村上会長は「生産者が増え、安定供給ができるように一丸となって頑張りたい」と意気込んでいる。

 唯一の提供店舗「味わってほしい」

 山木屋在来そばを唯一味わえる店舗が、山木屋地区のそば店「語らい処 やまこや」だ。同店は、同地区の避難指示が解除された2017年9月に営業を再開。店主の紺野希予司さん(68)は「山木屋在来そばを多くの人に味わってもらい、ブランド価値が高まってほしい」と期待を込める。山木屋在来そばは来年5月ごろまでの限定販売。ざるそば(700円)など、豊富なメニューを取りそろえている。

 営業は午前11時~午後2時。火、水曜日は定休日。31日~来年1月7日までは正月休み。問い合わせは同店(電話024・563・2342)へ。