自信を持ち重責打ち勝つ 会津若松出身・作曲家、鋒山亘さん

 
音楽で携わった映画の全米首位を喜ぶ鋒山さん。コロナ禍のため作業は全てリモートで行われた。サウンドトラックは音楽配信サービスなどで聴くことができる

 「この音楽プロジェクトの運命をワタルに託す」―。会津若松市出身で米国在住の作曲家鋒山亘さん(46)が、新型コロナウイルスに感染した師匠に代わり音楽の総まとめ役を務めた映画「ザ・クルーズ ア・ニュー・エイジ」(原題、ドリームワークス・アニメーション)が米国で公開3週連続で興行収入首位を記録した。鋒山さんは「責任の大きな任務を背負っての仕事だっただけに本当にうれしい。ドリームワークス作品らしい、夢がありわくわくする、情緒豊かなサウンドを楽しんでほしい」とヒットを喜ぶ。

 鋒山さんは16歳の時に会津高から交換留学で渡米後、同国の学校に編入し映画音楽作曲を学んだ。「紆余(うよ)曲折と挫折の数百連発だった」という約30年。映画やゲーム、吹奏楽曲などを手掛け、4年前からは映画音楽作曲家マーク・マザーズボー氏(バンド「DEVO(ディーボ)」メンバー)に師事し、「マイティソー・バトルロイヤル」「レゴムービー2」などハリウッドの大作映画の曲を一緒に作っている。

 会津高時代は「ごくごく普通の生徒で、パッとしなかった」と自身を評する。「高校は数学の赤点を解消しないまま退学しました。再試験を受けていないので来世に持ち越しです。こんな『赤点野郎』でもハリウッドで何とかなってます」と笑う。

 「クルードさんちの はじめての冒険」続編 米興行収入3週連続首位

 今回の映画は「クルードさんちのはじめての冒険」の続編で、原始時代に洞窟暮らしをやめて外の世界へ出たクルード一家を描いた、楽しくファンタジックな内容だ。コロナ禍のため、音楽製作は打ち合わせから作曲、録音まで全てリモート作業を余儀なくされた。師匠で音楽監督のマザーズボー氏、鋒山さん、映画監督らはオンラインで何度も話し合いながら、映像のイメージに合う音楽を磨き上げた。

 しかし、製作過渡期の6月、マザーズボー氏が新型コロナで重篤な状態となる。突然代理を任され、映画監督や映画会社重役らの対応も担った鋒山さんは「失敗できないというプレッシャーがとてつもなかった」と、当時を振り返る。

 世界トップクラスの映画会社との仕事という重責に打ち勝つために、自分に言い聞かせたのは「ここは自分に準備が整ったから来た場。だから必ずうまくいく。どんな問題も解決できるからここにいる」「自分には世界中の人が待っている役目がある」ということ。「心を落ち着かせ、『どうしたらみんなが喜んでくれるのかということ』に気持ちを集中させ任務に当たりました」

 幸いマザーズボー氏は回復し、鋒山さんとの共同作業で作曲が終了。録音はロンドンのスタジオで行われたが、鋒山さんやマザーズボー氏、映画監督らは米国にとどまり、オンラインで指示を出した。

 周到な準備をして行われた録音は、通常と変わらない最高峰の出来に仕上がった。原始的な打楽器が多用され、壮大な世界観とコメディー要素、ファンタジーなどが表現された、楽しく優しい曲たちが完成し、映画を彩っている。

 コロナ禍の米国では大都市の映画館が閉鎖され、新作の公開延期や早期のオンデマンド配信など映画業界の苦戦が続く。「ハリウッド映画も世界もすっかり変わった」と話す鋒山さん。「僕自身もどう進むか未知数ですが、映画に限らず、人々を癒やす、心にしみ入るきれいな音楽を書いていきたい」と、新しい時代を見据えている。