ふんわりと暖かく包む「葛尾ニット」 需要開拓へブランド開発

葛尾村にニットウエアの製造工場を置く金泉(きんせん)ニット(愛知県岡崎市)が初の自社ブランド「FEIL(フィール)」を発足させた。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う受注減から奮起し、デザインから製造、販売までを自社で手掛ける。ウールで編みながら、プロの販売員もカシミヤと見間違うほど質にこだわった「葛尾発」のニットウエアが、列島の冬を暖かく包んでくれそうだ。
なめらかで優しいウールの手触りを引き出す秘密は、阿武隈山系の自然に抱かれた葛尾の水にある。工場近くの井戸で地下約130メートルからくみ上げた水はミネラル成分が少ない軟水で、毛織物の仕上げの工程に使うと、ふんわりとした独特の風合いを生み出す。素材も厳選し、ウルグアイ産の良質な羊毛だけを調達している。
父が棚倉町出身という海外事業部長の佐藤雄一郎さん(36)=東京都=は「葛尾発、福島発のブランドとして、まずは地域の人たちに知ってもらい、幅広い年代に親しまれるよう拡大していきたい」と力を込める。
同社は震災と原発事故後、村内初の進出企業として2018(平成30)年6月に工場の操業を始めた。現在は約20人が勤務する。営業拠点とする都内の東京オフィスで試作品を作り、国内外の取引先から他社ブランド製品を受注後、葛尾村の工場で一括生産してきた。
しかし、新型コロナの影響で服飾業界を取り巻く環境は一変。外出自粛のあおりで衣類の需要が低迷し、同社も受注が落ち込んだ。
苦境下で商機を見いだそうと昨年4月に自社ブランド構想が浮かび、同5月末には試作品作りに着手した。販売会社の社長も兼ねる金岡秀一さん(74)は「(工場直営の)ファクトリーブランドの強みは質の高い製品を(流通業者を通さず)安価でお客さまに直接届けられること。モダンで気品ある商品を送り出していく」と手応えを語る。
初年度はセーターやカーディガン、スカートなど計6品目を展開。デザインを統括した佐藤さんは「生活に寄り添い、自然体で着られるベーシックなデザインを心掛けた」と説明する。
同社は今秋にも、本社にある最終工程の部門を葛尾村に移す計画だ。震災と原発事故から3月で丸10年となる中、金岡さんは決意を新たにする。「地域に根を下ろし、雇用を確保することで復興の役に立ちたい」
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