前田遺跡、珍しい木製品や漆塗製品次々 縄文時代史に新たな足跡

 
寒さや雪と闘いながら発掘作業に当たる作業員

 川俣町の縄文時代中期~晩期(4800~2700年前)の「前田遺跡」から、全国的に珍しい木製品や漆塗製品、多数の縄文人骨など多種多様な遺物が出土している。いずれも保存状態が良いため全国から注目を集め、縄文時代史に新たな歴史を刻む存在となっている。

 竪穴住居跡や掘立柱建物跡、土坑(食料貯蔵用、墓)、柱穴などの遺構が見つかったほか、土器や木製品、漆器、編み組製品、土偶、木柱、人骨などの遺物も出土している。湧水する低湿地層で遺物の残存が目立った。

 漆塗土器は、赤と黒の漆で渦巻きの模様を描き、凹凸を塗り分けている。珍しい漆器の取っ手付き浅鉢(約45センチ)、杓子(約35センチ)、赤漆の弓(約60センチ)なども出土した。木製品は100点を超え、いずれも一つの木材から削り出し、穴を開けるなど精巧だ。

 竹やササなどを使う編み組製品(ザルや籠など)は薄いため現存するのは希少だが、大きいものだけで10点以上出土した。掘立柱建物の木柱などが建っていた柱穴は数千カ所あり、大部分は木柱が腐食して土に返っているが、約140カ所で木柱が残っていた。

 縄文時代後期の墓域から人骨約40~50体が出土した。山間部の縄文遺跡では墓は見つかるが、人骨が出土するのはまれだ。人骨のDNA解析を行う方針で、調査が進めば年齢や性別、生活、ルーツなどが分かる。

 なぜ多くの遺物が残ったのか。それは周辺が河岸段丘と扇状地の地形になっていることに秘密がある。発掘している県文化振興財団遺跡調査部専門文化財主査の三浦武司さんは「集落を洪水や土石流が襲い砂質土で覆われた。そのため空気を遮断し、奇跡的に腐食の影響を小さくした」とみる。今後、木柱の年代測定や樹種同定で周辺環境、漆技術の解明で暮らし、土器に付着した炭化物の分析で食糧事情などを調査する。三浦さんは「考古学と科学の連携で新たな時代観が見える」と期待を込めた。

 発掘は国道114号改良工事に伴い2018年度から始まり21年度まで続く。寒さと積雪が厳しい今冬だが進められ、町民約40人が参加している。阿曽敏男さん(63)は「発掘に携われて誇らしい」、佐藤岩吉さん(68)は「地元の歴史に興味が深まった」と語った。