【コロナ急拡大・医療現場の今】医療体制 不安定さ「破綻懸念」

 
福島市消防本部で移送専用車両として使用している救急車。ストレッチャーや車両内部にビニールのシートをかけて患者との接触を最小限にとどめている

 「椅子の足が1本なくなり、3本足の状態だ」。新型コロナウイルス感染症対応に当たる県患者搬送コーディネーターの島田二郎(59)=福島医大教授=は、逼迫(ひっぱく)する県内の医療提供体制をこう表現する。「バランスが崩れると倒れるし、もう1本なくなると完全に倒れてしまう」。通常医療が破綻しかねない状況に、医療関係者の危機感は強い。

 受け入れ難航

 県コロナ対策本部で陽性者の搬送先などを調整する担当に就いた島田。昨年12月中旬に入った一本の連絡を境に、これまでの状況が一変した。

 「(福島市の)福島西部病院で入院患者に陽性者が出て、多数の発熱者がいるようです」。県の担当者からの一報を受け、島田は大規模なクラスター(感染者集団)になると予感した。

 感染者の受け入れ先の確保に向け、他病院と直接交渉を始めたが、福島西部病院は寝たきりの患者が多く調整は難航した。若者に比べ、寝たきりだったり、認知症の患者だと医療従事者の対応が難しくなるため、入院を断られるケースが過去にあった。入院期間は若者より長く、健康状態の悪化も懸念される。

 島田は「福祉施設でクラスターが拡大して入院者が多くなると、コロナ病棟がすぐに空かなくなる可能性もある」と危惧した。

 消防との協定

 感染拡大の中で力を発揮したのが、各保健所と消防機関が結んだ協定だった。患者搬送で救急車を活用する内容で、福島市消防本部は専用車両として2台を配備。昨年12月には1日に6人を搬送しなければならない日もあったが、管外の消防の協力を受けることができ、消防の担当者は「協定のおかげで短時間で患者を移送できた」と振り返る。

 総合病院が多い郡山市には昨年末、福島市からの移送例が3件あり、今月中旬には南会津保健所からも要請があった。ただ、郡山消防署で救急搬送に当たる消防司令補の松山辰徳(39)は「郡山市の医療機関で院内感染などが発生すると、県内の医療体制が一気に悪化してしまうかもしれない」と危ぶむ。

 入院できない

 県内では陽性者がすぐに入院できない事態も起きている。島田によると、家族で一緒に入院するなど特別な場合を除き、入院までの現在の待機時間は長くても2~3日程度。だが、陽性者が1日に100人、200人となれば、本来すぐに入院が必要な人でも入院できず、亡くなってしまう可能性もあり得るという。

 医療の逼迫がもたらす悪影響は陽性者への対応だけではない。「交通事故に遭って搬送が必要な時、救急救命センターで新型コロナの重症者をみていたら搬送できなくなる。それだけ新型コロナ対応には人が割かれるということを知ってほしい」と島田は警鐘を鳴らした。(文中敬称略)