鳴き声やドローンから観測、尾瀬のシカ調査 東大、福島大が新手法

 

 東大や福島大の研究者らが、本県など4県にまたがる尾瀬国立公園にある尾瀬ケ原に生息するニホンジカの数を、鳴き声やドローンによる観測から推定する手法を開発した。これらの手法で、600頭前後が生息していると今回初めて推定された。尾瀬ではニホンジカの食害が深刻で、研究チームは「将来的にはより精度の高い推定手法を開発し、シカの個体数管理のためのデータを提供したい」としている。

 東大生産技術研究所の沖一雄特任教授(52)や福島大食農学類の牧雅康准教授(45)らの研究チームが29日までに、計測手法などに関するスイスの国際科学誌「センサーズ」や国内の学会誌に発表した。

 環境省によると尾瀬ケ原にどれくらいニホンジカが生息しているか推定されたことはなかったという。

 今回の研究は2017(平成29)年度から3年間にわたって行われ、「フィーヨ、フィーヨ」という繁殖期のオスジカの鳴き声に着目した。複数設置したマイクロホンに届く鳴き声のタイミングのずれからシカの位置をリアルタイムに特定し、尾瀬ケ原全域のシカの分布を把握することに成功した。

 また、熱赤外カメラを搭載したドローン2台を飛ばし、約10平方キロの尾瀬ケ原全域のシカの数を把握する手法を開発。これまでのデータと組み合わせて生息数を推定した。研究チームは、人が踏み込むことによる自然環境への影響を最小限に抑えることができる調査だとしている。

 結果、鳴き声などによる推定では約550頭、ドローンの観測などによる推定では約630頭という数字が出た。沖特任教授は「この手法を尾瀬の植生被害を低減させるために役立てたい」と話した。

 牧准教授は「二つの異なる手法による推定で、比較的近い生息数に行き着いたことに意義がある」と指摘。その上で、「浜通りのイノシシの実態など、他地域の獣害対策にもこの手法を応用していきたい」と話した。