【コロナ急拡大・医療現場の今】宿泊療養 容体急変に危機感

 
オンラインで行われる診察でも、医師は体調の変化に気を付けながら患者を見守る

 タブレット端末やスマートフォンで話す様子は一見、日常の何げない通話のようだ。相手は宿泊療養をしている新型コロナウイルスの患者。無症状や軽症の感染者が静養する宿泊療養施設で、医師は容体の変化に神経をとがらせる。新規感染者数が高止まりし、医療機関だけでなく療養施設の負荷も高まる中、医師からは「無力感を感じる」との声が漏れる。

 県内でも事例

 「仮に今、症状がなくても気は抜けない」。福島市の宿泊療養施設を担当する医師岡野誠(72)=済生会福島総合病院=の言葉からは、全国で容体の急変が報告される新型コロナへの警戒感が伝わってくる。県内でも療養施設で患者の症状が悪化し、医療機関に搬送された事例があった。

 岡野は、療養施設の開設当初から携わる医師の一人。病院勤務の岡野は1カ月に8回ほど、午前8時~午後8時に療養施設で診察を担当する。看護師が午前と午後の2回、検温や酸素濃度測定の結果を集め、岡野ら医師がスマホなどで患者を診察する。診察時間は1人10分以上。その後、カルテを記入するため、診察が数人でも「もちろん手間はかかる」という。

 療養者の急増

 県は当初、「安全ベース」に立ち、患者がどのような症状であっても、まずは入院を原則としてきた。しかし、病床使用率が昨年12月15日に「ステージ3」(感染者の急増)の指標の25%を上回ったことで方針の転換を余儀なくされた。医師の判断を踏まえ、重症化リスクの低い若い世代などは直接、療養施設に入所させることを決めた。

 方針転換後、岡野は療養施設の姿が一変したと感じている。昨年12月8日に福島、いわき両市の2施設合わせて1人だった療養者が、その後の感染の急拡大でせきを切ったように増え、今月12日には2施設合わせて最多の71人に上った。福島市の施設では3人体制だった看護師を5人体制に拡充したが、岡野は「看護師は正直ぎりぎりの状態」と打ち明ける。

 岡野や県患者搬送コーディネーターの島田二郎によると、療養施設の看護師の人員配置は、退職した看護師の協力で成り立っている。各病院で新型コロナを担当する看護師の確保がままならない中、院外の療養施設の支援まで人手が回らないのが実情だ。

 計220室に拡充 

 県は、療養施設を郡山市に新たに60室確保し、県内の療養施設を計220室に拡充した。さらなる増室も視野に入れているが、それに合わせた医師や看護師の確保は不可欠で、増室への課題は多い。

 県が運用転換に踏み切ったのは、病院への負荷軽減が狙いだが、新規感染者は高止まりの状態。病床使用率は27日まで「ステージ4」(爆発的な感染拡大)の指標である50%を上回り続けた。28日には24日ぶりに50%を下回ったものの、入院者も療養施設の入所者も多い「ダブルパンチ」に、岡野は「終わりが見えない」と嘆く。(文中敬称略)