「炎のマエストロ」小林研一郎さん(いわき出身)芸術院賞

 
優れた芸術活動を表彰する日本芸術院賞を受賞した指揮者の小林研一郎さん

 日本芸術院(高階秀爾院長)は18日、優れた芸術活動を表彰する2020年度日本芸術院賞に指揮者・作曲家の小林研一郎さん(80)=いわき市出身=や、日本画家の千住博さん(63)、歌舞伎俳優の片岡孝太郎(本名片岡康雄)さん(53)ら6人を選んだと発表した。小林さんと千住さんは特に業績が顕著として恩賜賞も贈る。

 小林さんはエネルギッシュな音楽活動から「炎のコバケン」の愛称で呼ばれ、国内にとどまらず国際的な功績もたたえられた。授賞式は6月下旬に日本芸術院会館(東京)で行われる予定。例年、天皇皇后両陛下が出席される。

 本県関係ではこれまで小説家の中山義秀氏(白河市出身)、日本画家の大山忠作氏(二本松市出身)、彫刻家の三坂耿一郎氏(郡山市出身)、作曲家の湯浅譲二氏(同)が受賞している。本県ゆかりの人では二本松市名誉市民の彫刻家橋本堅太郎氏、いわき市立草野心平記念文学館名誉館長で評論家の粟津則雄氏らが受けている。

古里が創作意欲の源泉

 「古里の自然が創作意欲の源泉になった」。本年度の日本芸術院賞に選ばれた指揮者の小林さんが、受賞の喜びや地元への思いなどについて語った。

 ―芸術院賞に選ばれた感想を。
 「大変光栄に思っており、大きな励みになる。受賞の理由には東日本大震災の被災地をボランティアで慰問して回り、その収益金で楽器を寄贈してきたことも含まれているのかもしれない。年を重ねると体力や気力など失うものは多いが、登った階段の高みから見える特別な景色がある。その景色が私をいつも育ててくれていると今回改めて思い至った」 

 ―いわきへの思いを。
 「戦時中に生まれたので爆撃機B29が飛び交って防空壕(ごう)に逃げたりと大変な思いもしたけど、何メートルも透き通って見えるきれいな海があり、川の流れの中には小ブナなどいろんな生き物が群れをなしている。美しい自然と風薫る中で過ごした日々は、僕にとって夢のような時間でした。あの豊かな自然環境があったからこそ作曲という表現方法に興味を持ち、いいモチベーションになったのだと思っている」

 ―この1年はコロナ禍で傘寿記念公演が延期になった。
 「コロナ禍による休息は、僕にとって今まで頑張ってきたことへのご褒美みたいなもの。勉強に集中することができ、空いた時間は散歩して体力を培うようにした。とても大変な状況だけど、コロナウイルスに敵対するというより、また新しい世界をつくろうという特別な気持ちになれたことはうれしいことだった」

 ―今後の抱負を。
 「以前は『僕についてこい』みたいな気持ちで指揮をしていたが、もうこの年になるとオーケストラの方たちと一緒になって音を紡いでいくこと自体がありがたいことだと思うようになった。僕もオーケストラの一員になったつもりで輝きながら演奏し、聴衆の皆さんにとってさらに心のよりどころになるような演奏を届けたい」

こばやし・けんいちろう いわき市出身。東京芸大卒。日本フィルハーモニー交響楽団首席指揮者、東京芸大教授などを歴任。社会貢献を目的とした「コバケンとその仲間たちオーケストラ」を設立した。ハンガリー国大十字功労勲章受章。