大熊に「公設民営商業施設」オープン 飲食やコンビニなど9店舗

 
開所した商業施設の開所式でテープカットする関係者=5日午前、大熊町

 大熊町が大川原地区に整備していた公設民営の商業施設が5日、開所した。東京電力福島第1原発事故による避難指示の一部が2019年4月に解除されてから、町内で常設の商業施設が開所するのは初めて。住民帰還の課題となっていた買い物環境の改善につながると期待される。

 入居したのは飲食店4店舗、コンビニ、日用雑貨の販売店、電器店、美容室、コインランドリー各1店舗の計9店舗。町役場新庁舎東側に立地し、建築面積は約1500平方メートル。町内の店舗はこれまで、コンビニなどの仮設店舗のみだった。施設に隣接して公設民営の交流施設と宿泊温浴施設の整備が進んでおり、秋の全面開所を目指す。

 開所式が現地で行われ、吉田淳町長が「町民の心が通う交流と憩いの場になることを期待している」とあいさつ。関係者がテープカットし、待望の開所を祝った。町によると、今月1日現在、町内の居住者数は316人。町に住民登録のない東電の廃炉作業員も含めると推計で907人が住む。

 喫茶店主10年ぶり営業、笑顔

 商業施設に入居する9店舗のうち7店舗は、施設完成に合わせて10年ぶりに町内で営業を再開した地元の事業者だ。

 「お世話になった大熊への町孝行。震災前のように、人でにぎわうお店にしたい」。町民の憩いの場として約40年にわたり愛された喫茶店「レインボー」店主の武内一司さん(67)は、コーヒーをいれる手に力を込めた。

 町出身の武内さんは1978(昭和53)年、25歳で町中心部に喫茶店を構えた。店名はロックバンド、ディープ・パープルの名曲「キャッチ・ザ・レインボー」から取った。地元住民や原発作業員がコーヒーを手に会話を弾ませた、町の社交場だった。

 原発事故後は避難先の会津若松市に店を開き、元の店は解体。古里での再出発は諦めていたが、再開を待ち望む常連客たちの声に背中を押された。「誰かがやらないと町の復興は進まない」と決断した。

 開店と同時に、顔なじみの常連客が駆け付けた。その一人、伏見明義さん(70)はコーヒーを口にし「10年ぶりの味。身も心もほっとする」とうれしそうに話した。「早い、安い、多い」が評判のランチメニューの注文も相次いだ。「再挑戦は始まったばかり。これからが本番」。武内さんはそう話し、忙しそうに店内を駆け回った。