JFAアカデミー、再び聖地から挑戦 福島県出身4人「勇気届ける」

 
入校式で力強く決意表明する田村さん(中央)らJFAアカデミー福島16期生 =6日午後、Jヴィレッジ

 サッカーの聖地から世界へ羽ばたく―。東日本大震災、東京電力福島第1原発事故から10年ぶりに本県で再始動したサッカー選手育成機関「JFAアカデミー福島」。厳しい選考を突破した男子の16期生19人のうち4人は本県出身だ。「日本代表になって福島を勇気づけたい」と心を一つに、復興へ歩む広野町で暮らしながらJヴィレッジや周辺施設で技術を高め、夢の実現に挑む。

 県内から16期生となった4人は、菅野楓翔(ふうが)さん(12)=相馬市出身、田村悠真(はるま)さん(12)=福島市出身、渡辺瞳也(とうや)さん(12)=同、中沢蓮さん(12)=郡山市出身。育成年代の日本代表を輩出するなどより高いレベルの練習環境を求め、アカデミーの門をたたいた。

 「元気と勇気を届けられる選手になりたい」。中沢さんは欧州の強豪チームでプレーするという夢に向かう姿が、"第二の古里"の住民を奮い立たせる力になると信じる。震災当時は幼かった4人に10年前の鮮明な記憶はないが、報道などを通じて住民が今も復興の課題に向き合っている現状は知っている。

 アカデミーではサッカーの技術指導だけではなく、原発事故で避難を経験した住民との交流や、震災記録施設などを訪問する機会が設けられる予定だ。渡辺さんは「サッカー以外のことも積極的に学ぶことで人として大きく成長できる」と期待する。

 中学卒業までの3年間は、広野町の寄宿舎から広野中に通学する。

 親元を離れて全国から集まった仲間たちと暮らすが、4人は「未来を想像するとわくわくする」と口をそろえる。「どんな困難でも乗り越え、強さと自信に変えていく」。入校式で16期生代表として田村さんが言葉にした決意を胸に、4人は理想の未来へ歩んでいく。

日本サッカー協会・田嶋会長「社会貢献できる人材育成」

 入校式には、JFAアカデミー福島を運営する日本サッカー協会の田嶋幸三会長も出席した。式後に取材に応じ「社会に貢献できる人材を育てたい」と語った。

 ―10年ぶりに本県で活動を再開した。率直な思いを。
 「『ただいま』と言いたい。温かく迎えてくれた福島県の皆さんに感謝している。これからも応援してもらいながら、子どもたちの成長を後押ししていく」

 ―どんな人材を育てたいのか。
 「もちろん、日本代表としてワールドカップで活躍する選手になってほしい。しかし、そう簡単ではない。ただ、夢を追い続ける中でどんなことにでも対応し乗り越えられる人間に成長してほしい。社会のために貢献できる人材を育てたい」

 ―Jヴィレッジへの思いと今後の展望は。
 「復興し10年前よりも素晴らしい場所になった。協会としてシニア世代や女性を対象としたさまざまな大会を招致し、サッカーで笑顔になれる場所にしたい」

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 JFAアカデミー福島 日本サッカー協会(JFA)や県が連携し2006(平成18)年にJヴィレッジなどを拠点に開設した中高生対象のサッカー選手育成機関。震災と原発事故後、静岡県に一時的に拠点を移したが、本年度入校の16期生から男子が本県で活動を再開した。男子の育成期間はプロ契約の低年齢化などを踏まえ、中学~高校の6年間から中学3年間に変更となった。女子は24年度に帰還を予定する。