「海洋放出は打撃」 第1原発処理水、漁業・観光業者ら懸念の声

 

 東京電力福島第1原発の処理水を巡り、7日に菅義偉首相が漁業者団体トップに海洋放出方針の決定への理解を求めたことを受け、本格操業移行に歩み出した県内の漁業者からは「再び風評が広がるのではないか」と懸念の声が上がった。

 「海洋放出は漁師みんな反対のはずだ。漁業者に説明も何もない。放出するにしても国が誠意を持って説明する必要がある」。底引き船「第3仁洋丸」船主でいわき市漁協理事の鈴木三則さん(70)は語気を強めた。

 本県漁業は試験操業を終え、4月から本格操業への移行に向けた操業を始めたばかり。鈴木さんの船が停泊する四倉漁港周辺も荷さばき場の再建など10年で港の整備が進んだ。週2~3回程度だった漁の回数を増やすなど、今後数年で震災前の水揚げ量や流通規模に戻す計画だっただけに、鈴木さんは「これからという時。海洋放出となれば大きな打撃となる」と話した。

 「今のままでは(風評が)絶対起こってしまう」。新地町の漁師で相馬双葉漁協新地地区代表の小野重美さん(74)も不安を口にする。

 昨年、念願の新地地方卸売市場が再開した。宮城県からも仲買3社が訪れているといい、「福島の魚を販売してもらえるのはうれしいこと」と手応えを感じてきた。本格操業に向けて進んでいるという思いもあっただけに、「このままでは、『はい』とは返事ができない」と声を荒らげ、「海はつながっている。福島県だけの問題ではない」と他県への影響も懸念した。

 海洋放出は観光への影響も必至だ。相馬市松川浦観光旅館組合長で県一般旅館ホテル組合連合会長を務める管野正三さん(60)は「タンクが満杯になるのを目前にしたタイミングでの動きに、誠意のなさを感じる」と話す。松川浦周辺は、復興市民市場「浜の駅松川浦」の開業など観光誘客に向けた新たな取り組みが本格化する。「観光業者にもしっかりと目を向け、風評払拭(ふっしょく)に向けた議論を行い、風評対策をしっかりと決めてほしい」と注文を付けた。