「立場にない」発言、知事の意思示して 慎重姿勢に福島県民疑問

 
15日午前に県庁で開かれた原子力関係部局長会議に出席する内堀知事(奥中央)

 「県自身が容認する、しないという立場にあるとは考えていない」。東京電力福島第1原発で増え続ける処理水の処分方針を巡って飛び出した内堀雅雄知事の発言が波紋を呼んでいる。賛否両論分かれる問題に慎重な姿勢を示したようにも取れるが、賛成派、反対派の県民の双方から「その言い方はない」との声が上がる。「知事は一般の県民と違う。批判も覚悟で本人の意思を示して」との指摘もあった。

 福島市の70代主婦は、漁業者の苦悩に理解を示す一方、タンクでの保管を続けるリスクを踏まえ、海洋放出に賛成の立場を取る。しかし「(賛成か反対かを)言わないのは困る。誰かが言わないといけないのだから」と知事の発言に疑問を投げ掛けた。「自分は放出には反対」という郡山市の斎藤秀雄さん(72)も「最初から『立場にない』というのはずるい。県民の立場に立って発言してほしかった」と苦言を呈する。

 漁業者はどうか。いわき市の漁師志賀金三郎さん(74)は「漁業者が海洋放出に反対であるなど、県民にもいろいろな考えがあって、まとめるのは難しいのは分かる」と一定の理解を示す。しかし「茨城県など隣県の知事は海洋放出について意見を表明している。原発事故の被災地の知事として、県民のため方向性を示してほしい」と求めた。

 第1原発が立地し、全町避難が続く双葉町。「小さい町だし、名前は出さないでほしいんだが」と申し訳なさそうに話す30代男性は「処理水の問題をしっかり考えていたら、そんな中途半端な答えは言わない。それでいいのか」と語った。大熊町の中屋敷地区の行政区長を務める佐藤順さん(72)は「処分を進めてほしい大熊町民と、漁業関係者のはざまで明確な意見が出せないだろう」とした上で「県民の思いを伝え続けてほしい」と注文を付けた。

 処理水を巡る問題で、知事の存在感に首をかしげる人も。広野町の会社員高橋和己さん(53)は「海洋放出の方針決定を巡っては県の消極的な姿勢が目立つ。どこか国任せではないか。県民を守るリーダーとして言うべきことを発信してほしい」と指摘する。会津若松市に住む30代の会社員男性は「県民に対してまだまだ説明が足りない。国内、海外に向けても、安全性をアピールする力が足りないのではないか」と語る。

 若い世代に知事の発言はどのように響いたか。いわき市の磐城桜が丘高3年の八久保彩音さん(17)は「知事は一般の県民よりも、政府にものを言える立場だと思う。だからこそ、処理水の海洋放出で影響を受ける漁師の人たちの声を代弁してほしい」と願う。長男が1歳になる福島市の20代の主婦は「知事は県民の代表という立場。はっきり意見を言わない姿を見ると、どんな未来になるのか心配になってしまう」と話した。