【風評の行方・処理水放出】官民合同チーム 新たな支援策担う

 
打ち合わせを行う福島相双復興推進機構の職員ら。新たな風評を抑制するための役割を担う

 「ゼロから課題を聞き、一緒に考えていくことが大切。戸別支援の経験を踏まえて丁寧に、そしてきめ細かく支援策を届けていく」。被災地での産業再生や営農再開に取り組んできた福島相双復興推進機構(福島相双復興官民合同チーム)。新居泰人専務理事(54)は「新たな役割」を担うことになる機構の今後に、考えを巡らす。

 処理水の海洋放出を決定した政府の基本方針には、風評対策の一つとして機構が仲買や加工など水産関係業者らを新たに支援していくことが盛り込まれた。本県漁業にとって3月に試験操業を終え、本格操業に向けた移行期間が始まったばかり。試験操業中だった昨年、県内の沿岸・沖合底引き網漁業の水揚げ量は東日本大震災前の約17%にとどまっており、海洋放出で風評の拡大が懸念される水産業への支援は不可欠だ。

 機構は、東京電力福島第1原発事故で避難指示が出るなどした12市町村の事業者や農業者を支援する組織として2015(平成27)年8月に発足。今年3月末までに商工業を中心とした約5500の事業者、営農再開を目指す約2200の農業者を戸別訪問し、事業者に寄り添った支援を展開してきた。

 機構の支援を受け昨年4月、浪江町で事業を再開したのが柴栄水産。浪江町の請戸漁港で水揚げされた海産物を扱い、7月には直売所をオープンさせた。「今のところ、風評はゼロ。むしろ『柴栄の魚を買いたい』と言われるほど」と柴孝一社長(82)。手応えを感じ始めた矢先の政府方針の決定に、風評による販路の縮小や単価の低下を懸念する。

 機構は支援体制の構築に向けて今後、準備室、プロジェクトチームを設置する方針だ。活動範囲はこれまでの12市町村から、水産業が盛んないわき市、相馬市、新地町を加えた15市町村に広がるなど、新たな取り組みはまだ手探りの状態。「これまでと同じことが通用するとは思っていないし、思ってはいけない」(新居専務)。不安を抱えながらの船出になる。

 だが、機構の取り組みを知る柴社長は「海洋放出があっても、魚のおいしさは変わらない。自慢の『常磐もの』の味を広く体験させる取り組みを期待したい」と願う。新居専務はこう応じた。「現時点で『まかせてください』とまでは言えないが、苦しみを十分に理解して取り組んでいく。復興の歩みは決して止めない」