フラガールの熱意版画に 常磐興産・井上会長「春陽展」入選

 
休園時を振り返りながら版画制作の経緯を語る井上さん

 いわき市のスパリゾートハワイアンズなどを運営する常磐興産会長の井上直美さん(70)の版画作品が全国公募展「第98回春陽展」で入選した。描いたのは、新型コロナウイルス感染拡大の影響で同施設が休園中、観客に喜んでもらう日を目指して懸命に踊りの練習を続けたフラガールの姿だ。井上さんは「時代の記録として彼女たちの姿を残さなければと思った」と語る。

 ハワイアンズは新型コロナの拡大や政府の緊急事態宣言を受け、昨年3~6月のほとんどを休園した。対応に奔走する傍ら、井上さんの目に飛び込んできたのは、再び観客を沸かせる日を夢見て練習を続けるフラガールの熱意だった。

 本来なら、5月の大型連休で訪れる大勢の観客を前に、ステージで華やかに舞っているはずだった。しかし現実は、プールの水の音が聞こえるほど静かな空間で、踊り手たちは練習を重ねていた。

 観客はいなくとも変わらない踊りの美しさ。激しい動きで流す汗。集合時にはマスクを着けるなどして感染対策を取り励む姿。その全てにエネルギーが満ちあふれていた。井上さんは筆を執り、一つ一つ下絵にしていった。描いた絵から15枚を選んで1枚にまとめ、彫り進めて完成したのが今回の作品だ。

 子どものころから絵が好きで、約50年にわたり趣味で続けてきた。中でも版画の技法が性に合ったといい、好んで描いた。銀行員時代は風景を主に描いていたが、常磐興産の社長に就いたころから従業員らの接遇の姿に感銘を受け、人物も描くようになった。

 70歳を迎え、節目として自分の作品を初めて出品し、入選したのが今回の公募展。井上さんは「見に訪れた人がフラガールやコロナについて少しでも心に留まり、訴え掛けるものがあればうれしい」と話す。春陽展は26日まで、東京・国立新美術館で開かれている。