【風評の行方・処理水放出】国際理解 原発事故後報道少ない海外

 

 「自分の大学で大きな話題になっている。福島に行ったことがある人間として責任を持って発言したいので、知っていることを教えてくれないか」。政府が東京電力福島第1原発で増え続ける処理水の海洋放出方針を決定後、福島大国際交流センター講師のマクマイケル・ウィリアム氏(38)の元に、各国から問い合わせのメールが相次いだ。

 メールの送信者は海外の学生を本県に招く短期留学事業「福島アンバサダーズプログラム」の参加者。マクマイケル氏が2012(平成24)年から取り組む事業の参加者は累計で200人を超える。連絡してきた若者に、政府判断に至る背景や新たな風評の発生が懸念されることなどを伝えた。「しっかりと説明しようとする若者の存在は心強い。しかし、海外では日本政府の方針を不安視する報道があるのが現実だ」

 海外で起きる風評の問題に注目してきたマクマイケル氏。政府には方針決定前、関係各国と対話を重ねてほしかったと考えている。トリチウム以外の放射性物質が残った水は多核種除去設備(ALPS)で再浄化後に放出されることになっているが、「本当に言った通りにやるのか、東電と日本政府を信頼できるかどうかが問われている。国際原子力機関(IAEA)が監視に入る見込みであることなどを広く伝えていくべきだろう」と語った。

 アジア各国の風評問題を調査した東大大学院情報学環総合防災情報研究センターの関谷直也准教授(45)は「事故直後、近隣諸国で『自国の海産物が汚染されたかもしれない』という強い不安が生じた経緯があり、処理水の海洋放出への不安が大きい一因になっている」と指摘する。

 日本政府の方針を特に厳しく批判するのが韓国と中国だ。関谷氏は「両国の報道で風評が日本に『逆輸入』されている面がある」と分析、「政治的問題とは切り離して、処理水についてきちんとした情報発信が必要だ」と述べた。

 原発事故から10年。この間海外では事故に関する報道は少なく、10年前の事故当初の印象を持ち続けている人もいる。マクマイケル氏は「どの国も『福島に復興してほしくない』とは思っていない」とした上でこう続けた。「処理水を保管するタンクが廃炉の支障になりかねないことなど、この10年間の福島の歩みを踏まえた問題の背景を、しっかりと説明していくことが求められている」=おわり