「IgA抗体」福島医大取り出し成功 コロナ治療薬開発へ前進

 

 新型コロナウイルスの抗体医薬品の開発を目指す福島医大は27日、新型コロナに感染して回復した人の血液から、感染阻止に有効な中和抗体の一つ「IgA抗体」を取り出すことに成功したと発表した。医大はIgA抗体を使った医薬品の開発を進める方針で、今後、抗体の大量生産に着手、早ければ2年後にも臨床試験を始める考えだ。IgA抗体を使った医薬品が承認されれば世界初となる。

 医大は10月にも浜通りに拠点を整備、協力する企業とともに研究を進める。医薬品開発に時間がかかることから、スプレーやマスクなど衛生用品にもIgA抗体を活用する計画で、夏までに試作品を完成させる。

 医大は約1年前に抗体医薬品の開発を開始。感染して回復した協力者約90人から血液の提供を受け、新型コロナへの効果が期待できる抗体を80種類取り出すことに成功した。このうち中和抗体は18種類で、3種類がIgA抗体だった。医大独自の「免疫モニターチップ」というシステムを活用して取り出した。

 医大によると、IgA抗体は血液のほか口や鼻にも存在し、粘膜組織で多く分泌されるという。そのため医大は、新型コロナの感染経路である口や鼻に抗体医薬品を投与できれば効果が高いとみており、トローチや点鼻薬として投与する薬の開発を進める。

 新型コロナの抗体医薬品を巡っては、米国ですでに緊急使用許可が出ている薬が複数あるが、いずれも血液に多く含まれる「IgG抗体」を活用しており、IgA抗体の例はない。IgG抗体よりもIgA抗体の方が、感染を阻止する能力が高いとする先行研究もあるとしている。

 医大によると、ウイルスはヒト細胞の受容体に結合して感染する。中和抗体はウイルスの特定の部分に先にくっつき、感染を阻止する仕組みで、変異株にも効果を発揮すると期待される。現在接種の進むワクチンは体内で中和抗体を生み出して感染を予防するが、中和抗体が必ずできるとは限らない。抗体医薬品は中和抗体を確実に供給できるメリットがある一方で、ワクチンよりも製造コストが高いという。

 27日、医大で記者会見した竹之下誠一理事長・学長は「日本は新型コロナウイルスのワクチン開発で海外に出遅れたが、治療薬の分野なら挽回可能だ」と指摘した。