【常磐炭礦大閉山50年(下)】いわき発!水素などエネルギー革新

 
県内で初めて商用固定式の水素供給施設として開所した「いわき鹿島水素ステーション」=2019年3月

 「いわきは歴史的、地域的にエネルギーの街。ここから革新を起こさなければならない」。いわき市に蓄電池(バッテリー)関連産業の集積を目指す「いわきバッテリーバレー推進機構」代表理事の庄司秀樹さん(59)は強調する。

 東日本大震災後、浜通りでは水素を中心とした再生可能エネルギー利活用の取り組みが進んでおり、炭鉱から観光への転換を経て、さらに新エネルギーの中心地としてかじを切ろうとしている。

 庄司さんは「私自身、炭鉱で働いていた父が閉山に伴って火力発電に職場を移した姿や、原発を含めた発電所の保全業務など関連産業で生活基盤を支える人たちを見てきた」と話し、炭鉱から変化する産業の変遷を肌で感じてきた。

 いわき市では石炭産業が陰りを迎え、新産業都市指定に活路を見いだし、重化学工業が発達した。しかし、競争力の衰えが見え、復興需要の終了も伴って急激な人口減少が危惧されている現状がある。

 その中で震災後に推進機構が進めてきたのがバッテリーバレー構想だ。庄司さんが経営するバッテリー性能評価の最大手東洋システムに加え、常磐共同ガスやクレハ、古河電池などがいわき市に事業所を構え、バッテリー関連企業の潜在能力は高い。

 庄司さんらは水素と蓄電池併用技術の開発などを進めながら、市沿岸部への水素パイプライン敷設、消費電力を全て再生可能エネルギーで賄う工業団地整備などを関係機関に働き掛ける。庄司さんも「経済活性化や雇用創出を含め、希望ある未来をつくりたい」と語気を強める。

 構想の基盤は整ってきている。2019年に根本通商(いわき市)が市内に県内初の商用定置式の水素ステーションを開所し、昨春には新常磐交通が東北初となる水素で走る燃料電池バス運行を開始した。また燃料電池車(FCV)保有は県内の8割をいわき市が占め、国の脱炭素推進に向けた動きも追い風となっている。

 小名浜港は次世代エネルギーの流通拠点となる「カーボンニュートラルポート」に位置付けられており、庄司さんは「港を持ついわきから郡山や会津、福島とつながり、国際競争力を高めたい」と話す。

 かつて「炭鉱のまち」と呼ばれたいわき。石炭から形を変え、再びエネルギーの中心地になりつつある。

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 いわきバッテリーバレー構想 地域産業活性化と復興加速へ向けて庄司秀樹東洋システム社長らが2012(平成24)年から提唱。西日本に集中し災害リスクを抱える蓄電池関連産業の分散立地も目的とする。産学官連携の研究会を経て15年に推進機構が発足した。21年4月現在で加盟企業は約40社。