幕末知る樹木伐採へ 世良修蔵暗殺ゆかりの地、福島「客自軒」跡

 
客自軒跡地の樹木伐採などの工事の安全を祈って行われた神事。写真に写る樹木は当時の中庭にあったモミジなど=2日

 幕末の福島藩城下(現在の福島市中心部)で起き、戊辰戦争拡大の引き金となった長州藩士・世良修蔵の暗殺事件。実行犯だった仙台藩士の定宿で、世良が殺害前に尋問を受けた割烹旅館「客自軒(かくじけん)」跡地に残っていた樹木が伐採されることになった。樹勢が衰えてきて周囲に影響が及ぶ恐れがあるためで、関係者は「心苦しいが、仕方ない」と肩を落とす。

 暗殺事件は1868(慶応4)年閏(うるう)4月に起きた。新政府軍の指揮官だった世良が福島城下滞在中に書いた密書が仙台藩士の手に渡り、怒りを買って襲撃された。客自軒の中庭に連行されて尋問を受け、阿武隈川沿いで処刑された。同市では都市化が進んで幕末の町並みが失われており、客自軒跡地にある樹木は幕末の歴史を伝える数少ない痕跡の一つだった。

 客自軒は明治中期、所有者変更に伴い「紅葉館」に改名した。名付け親は本県の自由民権運動の中心人物・河野広中で、庭にあったモミジから命名した。建物自体は市指定有形文化財となり、同市民家園に移築・復元されている。客自軒跡地には当時の中庭や、入り口にあったモミジやマツなどが残り、このうち大きな樹木6本を伐採し一部を残す。

 明治中期から所有する赤石家は2日、現地で工事の安全を願う神事を行った。客自軒(紅葉館)で暮らしてきた赤石宏さん(60)は「昔の光景をなくすようで心苦しくさびしい」と話す。弟の赤石克さん(56)は「近隣に迷惑を掛けてからでは遅いので仕方がない」と語った。樹木の伐採は10月から行われる。