障害者就農、広がる選択 郡山の企業、岩瀬牧場に20人受け入れ

 
改修が進む牛舎で「農福連携のモデルケースになる事業所をつくる」と意気込む栢本さん

 鏡石町の岩瀬牧場を拠点として、障害がある人たちが酪農や農業に携わる「農福連携」の取り組みがスタートする。郡山市の企業が使われていない牛舎を改修し、約20人を受け入れて質の高い乳製品作りに取り組む予定だ。8月の開所に向けて準備が急ピッチで進められており、利用者がやりがいを感じながら自立した生活が送れるようにサポートする。県によると、酪農分野での農福連携は初という。

 取り組みの中心となるのは、動物に負担をかけない注射針などを開発している郡山市のハンドレッド。社長の栢本(かやもと)直行さん(43)は、酪農関係の製品を扱う企業で経験を積んだ後、2016(平成28)年に起業した。「いずれは人と動物、自然を結び付けるような事業をしたい」と農福連携に関心を寄せていた。

 「もし歴史ある牧場と連携できたら、観光客や地元の人も訪れる中で利用者に生き生きと働いてもらうような環境になる」と考え、岩瀬牧場に協力を求めた。すると、牧場側が栢本さんの申し出を快諾。話はとんとん拍子に進み、施設整備に国の補助金を活用することもできるようになった。

 牧場内には、利用者が通所して働く「就労継続支援B型事業所」を設置する。利用者に賃金ではなく、売り上げの中から「工賃」を渡す仕組みのため、売り上げの確保が鍵となる。栢本さんは、味が濃厚な牛乳が取れるブラウンスイス種の乳牛を飼育することで差別化を図る考えだ。質の高いチーズやヨーグルトなどの乳製品を製造、販売することで工賃アップを目指す。

 また、牧場近くに農地を借り、栄養価に優れた機能性野菜を育てることも計画している。栢本さんは「開かれた場所で頑張る障害者の姿を伝えながら、農福連携のモデルケースになる事業所をつくりたい」と意気込みを語る。

 福祉関係者も同社の取り組みに期待する。須賀川、鏡石、天栄の3市町村で障害者に関する相談を受けるすかがわ地方基幹相談支援センターの担当者は「体力を使う酪農や農業が向いている障害者もいる。就労に向けた障害者の選択肢が広がることは大きい」と話す。

 現在は牛舎などの整備がおおむね終了し、試験的な乳牛飼育に入った段階だ。8月の開所に向け、行政と連携して通所する障害者の募集を進めていくことにしている。

 栢本さんは「ようやくスタートが見えてきた。障害者問題の解決に向け、何としても成功させる」と誓った。