情報漏えい10年以上 官製談合初公判、前美里町長に求刑1年6月

 

 町発注の工事で、業者側に予定価格や最低制限価格を事前に漏らすなどしたとして、官製談合防止法違反などの罪に問われた前会津美里町長の渡部英敏被告(80)=同町=と、公契約関係競売入札妨害の罪に問われた斎藤工務所元社長の斉藤正直被告(65)=同町=の初公判は24日、地裁会津若松支部(中川卓久裁判長)で開かれた。両被告とも起訴内容を認め、検察側は渡部被告に懲役1年6月、斉藤被告に懲役1年を求刑、結審した。判決公判は7月5日午前11時から。

 検察側の冒頭陳述などによると、両被告は約50年前に知り合い親交を深めると、渡部被告が2008(平成20)年ごろから、斉藤被告に工事の入札予定価格などを度々教えるようになった。渡部被告は最低制限価格などの書かれた「予定価格調書」を町の担当課長が持参した際、原本を課長に返却した上で見本を手元に残し、斉藤被告に手渡した。起訴された二つの事件については、「長年にわたって懇意にしていた斎藤工務所に落札させたいなどと考えた」と指摘した。

 論告で検察側は、渡部被告について「町長の立場を悪用した。町民の信頼を裏切り、町発注の公共工事だけでなく行政事務全般に対する信頼まで失墜させた」と述べた。斉藤被告については「経営する工務所の利益を上げたいという動機は身勝手かつ利欲的」とした。

 渡部被告の弁護側は「町のため多くの要職に就いていた斉藤被告の依頼に応じて教示した。見返りの受け渡しもなかった」と執行猶予付きの判決を求め、斉藤被告の弁護側も「社会的制裁を受けた」などと寛大な判決を求めた。

 起訴状によると、昨年の2件の町発注工事を巡り、渡部被告は町長室で予定価格や最低制限価格を斉藤被告に漏らした。斉藤被告はその情報を基に最低制限価格と同額または近い額で落札。いずれも公正な入札を阻害した、などとしている。

 紺色のスーツに白色のワイシャツ、ネクタイ、短髪姿で出廷した渡部英敏被告。冒頭で裁判長から職業を問われると、「無職です」と答え、罪を認めた。公判で明らかになったのは、10年以上にわたって不正を続け、「公正な職務」よりも「自らの意向」を反映させた姿だった。

 被告人質問などによると、渡部被告が初めて斉藤正直被告に入札情報を伝えたのは2008(平成20)年ごろ。業者間での受注調整がまとまらないことが増えてくる中、斉藤被告から持ち掛けたという。その後も斉藤被告から入札情報の漏えいを持ち掛けられたが、断ることはせず、漏らした件数は20件近く。金銭などの見返りはなく不正の認識もあったが、立ち止まることはなかった。

 交通関係など町の各団体の要職を務め、渡部被告の選挙の応援もしていた斉藤被告。「いろいろお世話になっていた。やむを得ず」(渡部被告)だったという。「町の公共工事は町の業者に消化してもらうのが筋」との思いも吐露。町を訴えたことがあった業者に「仕事をやらせたくない」という思いがあったことも明かした。検察官から「意のままにしたい思いがあったのでは」と問われると、「そう言われると、そうかなと思っている」と答えた。

 最終意見陳述で「町民、職員、議会の皆さんに申し訳なく、おわびしたい」と述べた渡部被告。閉廷後は傍聴席を見つめ、一礼して法廷を後にした。