被害者家族「大切な人返して」 三春ひき逃げ殺人、7日初公判

 

 三春町で昨年5月、男が清掃作業中の男女2人を故意にトラックではねて殺害したとされる事件の裁判員裁判が7日、地裁郡山支部で始まる。大切な人を返して―。事件発生から1年余りがたつが、被害者の家族が負った心の傷は、今も癒えないままだ。

 自宅玄関に飾られた、家族を見守るように優しい表情を浮かべる男性の写真。「主人の死を受け入れられていない。主人を返してほしい。私の思いはそれだけです」。事件で亡くなった三春町、当時55歳の会社員男性の妻(58)は、事件から1年が過ぎても心の整理をつけられずにいる。

 地域の自治会活動に熱心だった男性。事件が起きた河川周辺の清掃作業日も、1カ月前からカレンダーに記していた。作業を終えて戻る途中、同町、当時52歳の会社員女性と共にトラックにはねられ、帰らぬ人となった。「まさか二度と会えなくなるなんて」と、妻は今も現実感のない、信じられない思いで日々を過ごしている。

 男性は趣味も多く、一家の大黒柱として家族を大切にした。孫と釣りに出掛け、釣った魚でバーベキューを楽しむなどした。定年退職後は、ドライブで日本中を旅する夢もあった。長女(32)は「仕事で疲れていても一生懸命に家族と向き合ってくれた」と振り返る。

 一家のあるじを失った後も、何とか気丈に暮らすことができたのは、事件後に署名活動に取り組むなどした周辺住民の気遣いが大きいという。「皆さんの支えがあってこそ、頑張って生きることができた。感謝しかない」と妻は話す。

 7日の初公判では、被害者参加制度を利用して出廷する予定。夫を失った無念さなどを伝えるつもりだ。

 長女は、多くの人に裁判に関心を持ってもらうことで、犯罪抑止につながってほしいと願う。「身勝手な理由で他人を巻き込む犯罪は、全国各地で起きている。被害者家族は、つらい思いをしている。もうなくなってほしい」