【立谷秀清相馬市長インタビュー】ワクチンに期待、接種が進む

 
「接種がスムーズに進んでいるのは、市民の協力のおかげだ」と語る立谷氏

 立谷秀清相馬市長は福島民友新聞社の取材に応じ、新型コロナウイルスワクチン接種について、希望しない人の考えも認めるべきだとし「打った人も打たなかった人も、優しい気持ちで暮らしてほしい」と呼び掛けた。(聞き手 社長・編集主幹 中川俊哉)

 副反応含めて情報を提供

 ―相馬市はワクチン接種が特にスムーズに進んでいる。
 「昨年12月に計画作りに着手し、ほぼ思い描いた通りに進んでいる。全て集団接種にしたのは、個別接種がワクチンの取り扱いや副反応への対応などの面でリスクがあり、集団接種を企画してほしいと地元の医師会から要望があったためだ。医師会などから医師を集団接種会場に派遣してもらう仕組みをつくった。医師だけでなく看護師と事務員の3人セットで来てもらっている。事務員による予診票のチェックは抜群で、スムーズに進んでいる」

 ―市民には地域ごとに、日時を決めて接種を受けに来てもらっている。
 「集団接種のため市民はかかりつけ医を選択することができない前提だったので、日時指定で接種する仕組みに協力してもらうことにした。高齢者が集団接種会場に来るのにバスを走らせる必要もあったので、地域ごとにした。接種がスムーズに進んでいるのは、当初想定した以上に市民が協力してくれているためだ。9割以上の市民が指定された日時に来てくれる。ただ、全てを集団接種でやるこの仕組みを規模の大きい自治体でやるのは難しいだろう」

 ―市民が協力してくれたのはなぜか。
 「ワクチンに対する期待が思いのほか大きかったのだと思う。海外などの先行事例が報道され、死亡例が極めて少ないことが明らかになり、ワクチンへの恐れが徐々に薄れたことが影響した」

 ―余剰分のワクチンの取り扱いは。
 「相馬市は年齢に関係なく、余ったら打てる人にどんどん打っていこうという方針で進めた。その中でも、学校の先生や(社会に必要不可欠な仕事をしている)エッセンシャルワーカーらを優先した」

 ―市は、接種した市職員の副反応についての調査結果をまとめた。2回目の接種後に37.5度以上の発熱があった人は全体の45.9%に上った。
 「これは全国的な傾向だ。ワクチンは希望する全員に打たなければいけないが、ワクチンを打つか打たないかは本人の判断になる。われわれとしては副反応のデータなど正確な情報を提供するとともに、市民が安心して接種できるように最大限の注意を払っている。副反応で調子が悪いときは、遠慮しないで受診してくださいと呼び掛けている。1回目の接種で副反応がひどかった人には2回目の接種を勧めず、どうしても受けたい人は医療機関で打ってもらうようにしている」

 ―東京電力は福島第1原発での職域接種実施を表明したが、廃炉関係以外の除染作業員などの接種はどう進めるべきか。
 「環境省の責任でやってほしいと小泉進次郎環境相に要請しており、環境省として対応していくことになる。接種券を持たない単身赴任者が多い除染作業員が一般市民と同じように集団接種会場に来ると、混乱が避けられない。除染作業員のためにも企業ごと、単身赴任者はまとめてやらなければならないと思う」

 接種後の議論「尚早」

 ―ワクチン接種後の社会をどう考えるか。海外では接種の進展に伴いマスク着用を不要としたケースなどが報道されている。
 「接種後のことを議論するほど現在接種は進んでおらず、議論は時期尚早だ。ワクチンを打ってもリスクがゼロになるわけではないから(密閉、密集、密接の)『3密』の回避など『これまでの感染症対策を十分留意した上で暮らしてください』と呼び掛けている。油断してはいけない。接種した人のマスク着用をどうするか、社会的な統一した合意形成がいつできるのか分からないが、まだ議論する時期ではない。イスラエルや英国のデータはあるが、日本ではこれからどうなるのか、誰も分からない。もうちょっとワクチン接種が進んだ段階で、みんなで考えないといけない問題だ」

 ―ワクチンを接種しない人への差別の防止など、今後必要な心構えについて聞きたい。
 「ワクチンを希望しないという人の考え方も、みんなで認める社会でなければならないと思う。同調圧力が生じないようにするべきで、特に中学生が接種を受けるケースなどはわれわれ大人が細心の注意を払わなくてはならない。一般的には、接種していない人に対する思いよりも、自分が接種したという安心感の方が強く、感染した人を差別するような感情が生まれる状況とは異なると思う。打った人も打たなかった人も、優しい気持ちで暮らしてもらいたい」