ここが僕の甲子園、闘病乗り越え先導役

 
入場行進のリハーサルに臨む鈴木さん=6日、いわき市・いわきグリーンスタジアム

 いわき市のいわきグリーンスタジアムで7日に開幕する全国高校野球選手権福島大会では、開会式前の入場行進で東日大昌平高3年の鈴木太一さん(17)が先導役を務める。指定難病との1年1カ月にわたる闘病を乗り越え、大役を務める鈴木さんは「まさか自分もグラウンドに立てるとは思ってもいなかった。ここが自分の甲子園だと思って歩く」と決め、開幕の日を迎えようとしている。

 鈴木さんに病魔が襲ったのは昨年2月1日朝。学校寮からの通学途中、突然道ばたで倒れ、市内の病院に救急搬送された。農作業をしていた付近の住民に見つかるまで約20分、意識は戻らなかった。医師からは「植物状態もあり得る」と宣告され、言葉を失った。

 病名はビッカースタッフ脳幹脳炎。運動失調や意識障害などの症状が特徴の指定難病だ。野球部員としての活動は休止を余儀なくされ、東京都の大学病院に転院。血漿(けっしょう)交換などの治療を受けた。

 リハビリのために再度、転院した。寝たきりだった体は歩く以前に、ベッドから起き上がることさえままならなくなった。退院できたのは17歳の誕生日を迎えた昨年7月31日。学校に戻ることができたのは昨年10月になってからだった。

 不安はあったが「(野球部の)みんなが変わらずに迎え入れてくれた」。仲間の笑顔が目の前にはあった。当初はつえを突きながらの歩行だったが、今ではランニングができるまで回復。今年3月に完治を伝えられ、練習にも参加している。

 東京都出身の鈴木さんは、地元の先輩の勧めで東日大昌平高に入学し、一塁手のレギュラーを目指して練習に励んできたが、難病により高校最後の大会は「スタンドで見守ることしかできない」と思っていた。

 先導役に推薦され、一度は諦めたグラウンドに立つ権利をつかんだ。「親や先生、仲間に『ここまでできるようになった』と伝えたい」。その足跡は誰よりも深く、濃くグラウンドに刻まれるはずだ。(折笠善昭)