「イノブタ」生息拡大せず 福島大チームが原発周辺調査

 

 東京電力福島第1原発事故で野生化したブタとイノシシが交雑した「イノブタ」の生息地域の拡大が懸念されている問題で、福島大の研究チームが福島第1原発周辺のイノシシの核DNAを調べた結果、ブタ由来の遺伝子を高い割合で持つ個体は交雑が起きたとみられる第1原発周辺地域のみで見つかり、生息地域が広がっていないことが分かった。研究チームは、交雑の個体は野生で生き残るのが難しい可能性があり、今後生息地域拡大のリスクは少ないと指摘している。

 福島大共生システム理工学類の兼子伸吾准教授(43)=分子生態学=や、同大共生システム理工学研究科を修了し現在は筑波大に在籍しているドノヴァン・アンダーソン研究員(28)らの研究チームが、6月30日付で英王立協会紀要オンライン版に発表した。

 研究チームは2015~18年に大熊町など原発事故の帰還困難区域で発見されたイノシシ191個体について、「核マイクロサテライトマーカー」という手法で核DNAを調べた。結果、16%に当たる31個体が野生化したブタの遺伝子を持っていたが、交雑が起きた地域から離れた内陸では著しく少なく、生息地域を広げていないことが分かった。

 ブタと交雑することでイノシシが大型になり、子どもを産む数が増え、人を恐れない性格になる可能性があるとして、交雑個体の生息地域拡大が懸念されていた。兼子准教授は、第1原発周辺では野生で生きることができる強い交雑個体が生まれなかった可能性があるとし、「幸い生息地は広がっていないとみられ、従来の個体群管理で対応可能であることが分かった」と話した。