放射線、正しく知ろう 環境省啓発、大学でセミナー

 

 環境省は本年度、東京電力福島第1原発事故に伴う放射線が健康に与える影響について正しい理解を広めるため、五つの活動を軸にした新たな取り組みを始める。全国の大学から100カ所ほどを募ってセミナーを開き、学生の学びと発表の場をつくるほか、県内外の避難者や本県への移住希望者向けの相談体制を充実させる。複数年にわたり活動を続け、本県への風評払拭(ふっしょく)につなげたい考えだ。

 小泉進次郎環境相が15日、東京都内で開いた発足イベントで発表した。「知る」活動では学生や若手医療従事者を対象に健康影響がテーマの論文を科学的に読み解く機会を設け、妥当性を検証する。

 大学向けの「学ぶ」ではセミナーを開催後、全国を8ブロックに分け学生の発表を映像に収録。都内でシンポジウムを開き、成果を共有する。「聴く」では放射線リスクコミュニケーション相談員支援センター(いわき市)への支援を強化。自治体とも連携して、県内外の避難者や移住希望者らとの車座での意見交換会を通じて放射線に関する不安、悩みに答える。

 また、「決める」では不安がある人に対し、結婚や出産など人生の節目で自ら意思決定できるよう正しい情報を提供する。県民健康調査の甲状腺検査を巡っては検査を受けるかどうかを判断してもらうため、利益、不利益などについて検査の段階ごとに情報を届ける。

 原発事故から10年が経過し、国連放射線影響科学委員会(UNSCEAR)が3月に公表した最新報告書では「被ばくが直接の原因となり、将来がんが増えるなどの健康影響が見られる可能性は低い」と結論付けた。

 しかし、三菱総合研究所が昨年行った調査で「現在の放射線被ばくで福島県民の将来生まれる子どもや孫への健康影響がどのぐらい起こるか」と尋ねたところ「可能性は高い」「非常に高い」を合わせた割合が全国平均で41・2%に上った。
 この結果から、小泉氏は「県民への差別、偏見につながる恐れがある」と危機感を示し、2025年までにこの割合を20%に半減させる目標を表明した。

 活動名は「ぐぐるプロジェクト」で、基本理念の3本柱となる「学び、知を紡ぐ」「人、町、組織をつなぐ」「自分ごととして伝わる」の最後の文字から取った。公式ホームページは今月下旬に開設する予定だ。