コロナ疑い、問診に時間...増える「搬送困難」 5週連続前年上回る

 
救急患者に問診する様子を記者に実演する郡山地方消防本部の救急隊員。行動歴などを詳しく聞き取る

 新型コロナウイルスの感染が広がる中、患者の搬送先がすぐに決まらない「救急搬送困難事案」が県内で増加傾向にある。県内での件数は、7月中旬から5週連続で前年同期を上回った。関係者は「切羽詰まった状況にはない」とするが、感染拡大が続けば、救急搬送の現場に大きな影響を与える恐れも。助かる命を救うための分岐点にきている。

滞在2時間

 「呼吸が苦しい」。今春のある土曜日、郡山市の40代男性が体調の異変を訴えた。郡山地方消防本部によると、同本部の救急隊員が男性を問診。男性の周辺でコロナの陽性者や濃厚接触者はいないが、仕事で首都圏との往来が頻繁にあったことなどが判明した。

 内科当番の二次救急病院に収容を依頼したが、収容しようとした場所が別のコロナ疑い事案で使用中のため「収容不可」に。ほかの病院に照会しても内科医不在などを理由に搬送ができず、管轄外の県北地区の病院に搬送することになった。

 現場滞在は約2時間、問い合わせは8回。「コロナが疑われる患者では典型的なパターンの搬送困難事案。病院決定に苦慮した」と、同本部の担当者は明かす。

受け入れ慎重

 救急搬送困難事案は前年同期比で増加が続く。県によると、7月5~11日の1週間が38件で前年同期比3%減少。以降、1週間単位で63件(同80%増)、67件(同72%増)、49件(同53%増)、70件(同35%増)、54件(同26%増)と、5週連続で増加した。

 事案に数えられるのは搬送開始までの時間や、受け入れの照会件数が一定時間・数を超えた場合だが、郡山地方消防本部は、増加の一因に現場の滞在時間が長くなっていることを挙げる。

 県中、県南では昨年12月、医療機関ごとに異なる質問内容を解消するため病院や医師会などと統一の問診票を作成。現場で「家族や職場など周辺にコロナ患者、濃厚接触者がいるか」「県外への移動歴はあるか」などを細かく聞き取るようにした。それもあり、滞在時間が長くなっているという。

 昨年と比べて、7月の熱中症搬送者が多かったことも要因とする。発熱が伴うことでコロナとの見極めが難しく、病院側が慎重にならざるを得ないという。そのほか、病床の空き状況など、さまざまな要因が絡まって、救急搬送が困難な事案が増えている。

予防の心掛け

 「切羽詰まっている状況かというと、そこまでではない」。県内の現状について、県患者搬送コーディネーターの島田二郎福島医大教授はそう分析する。県内もコロナの「第5波」の真っただ中といえるが、「通常の外来などに大きな影響は出ておらず、なんとか持ちこたえている状況」という。

 ただ、「今後感染者が増えるか減るかでだいぶ変わってくる」と指摘。首都圏で起きているような生死に関わるケースも「福島でも起こり得る」と警鐘を鳴らし、郡山地方消防本部も今後の状況悪化に懸念を示す。

 対策の一つとして、同本部は事故などを未然に防ぐ「予防救急」の重要性を指摘。「ためらわず救急車を呼んでほしいが、日頃からけがや病気の予防に心掛けてもらえれば」としている。

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 救急搬送困難事案 救急隊員が現場到着から搬送開始まで30分以上を要し、4カ所以上の医療機関に受け入れの可否を照会したケース。千葉県柏市で今月、新型コロナ陽性で自宅で単身療養中だった妊娠29週の30代女性が、入院受け入れ先が見つからずに自宅で早産、男の赤ちゃんが死亡するなど首都圏でも問題となっている。