処理水影響の事業者らに相談窓口 風評被害支援10分野

 

 政府が24日に決めた東京電力福島第1原発の処理水処分に伴う当面の「風評被害対策」は、課題解決の道筋を大きく10分野に分けて示した。海洋放出の影響を受ける事業者への対応として、北海道から千葉県までの太平洋沿岸の道県に特別相談窓口を設置し、販路開拓などの支援につなげる。窓口は日本貿易振興機構(ジェトロ)などと連携し、早ければ来月にも事業を開始する。

 漁業者が懸念する後継者確保の問題については、漁船や漁具の導入を支援するほか、研修などを通じた育成も強化する。農林業への対応では、インターネットを活用した食品の安全性や魅力の発信を継続する。県内では6次化産業化に向けた事業者マッチングなども支援する。

 処理水処分に伴い損害が発生した場合には、政府は放出の前後を問わず、実態に見合った賠償をするよう東電を指導する。被害者に立証の負担をさせないため、原発事故前の実績や統計データを基に算出するなどの簡略化を検討する。

 処理水の分析を巡っては、国際原子力機関(IAEA)のほか、地元自治体や農林水産業の参加により監視体制の強化を図る。水産物のモニタリング(監視)では放射性セシウムに加え、処理水に含まれるトリチウムの測定を新たに実施する。

 児童、生徒に理解を深めてもらう取り組みでは、全国の学校に配布する放射線副読本を見直し、処理水に関する説明を加える。本県への修学旅行誘致も後押しする構えだ。

処理水の処分に伴う当面の対策

【風評を生じさせないための仕組みづくり】
◇徹底した安全対策による安心の醸成
(対策1)風評を最大限抑制する処分方法の徹底
▽基本方針を守った処分計画の具体化
▽人や環境への影響確認
▽処理水による魚の飼育など分かりやすい情報発信
▽原子炉等規制法に基づく審査
(対策2)モニタリングの強化・拡充
▽専門家の確認や助言を得て客観性、透明性、信頼性を高めたモニタリングの強化、拡充
(対策3)国際機関などの第三者による監視と透明性の確保
▽IAEAなどによる安全性の確認や情報発信への協力
▽処理水分析などへの地元自治体、農林漁業者などの参加
▽放出前の処理水の性質や放出後のモニタリング結果などの丁寧な情報公開
◇安心感を広く行き渡らせるための対応
(対策4)安心が共有されるための情報の普及、浸透
▽農林漁業の生産者に対して、海洋放出決定の背景や安全対策などを繰り返し説明
▽製品の流通過程で適正な取引が行われるよう加工、流通、小売の各段階への説明と取引実態の把握
▽大消費地で安全性や被災地産品の魅力を発信するイベントなどの重点的な実施
▽全国規模で、広く理解を深めるための情報発信
▽販売員や旅館従業員など消費者と接する人が知識を深め、自ら説明できる状況を構築
▽若い世代への出前授業や放射線副読本の活用などの教育現場での取り組み
▽自治体による取り組みや魅力の情報発信
▽事実と異なる主張への科学的根拠に基づく反論など、誤解を生じさせないための対策
(対策5)国際社会への戦略的な発信
▽国際機関による安全性の確認や情報発信への協力
▽各国市場関係者への安全性に関する説明の徹底。日本の対応への理解を深めるための視察機会の提供
▽海外の報道機関や科学者、有識者、インフルエンサーらに対する情報提供
▽農林水産物や食品に対する輸入規制の緩和、撤廃に向けた丁寧な説明
(対策6)安全性などに関する知識の普及状況の観測、把握
▽インターネット調査などにより、効果的な情報発信の在り方を検証
▽本県や隣県の産業での風評影響を継続的に調査し、発生のメカニズムを分析

【風評に打ち勝ち、安心して事業を継続・拡大できる仕組みづくり】
◇風評に打ち勝つ、強い事業者体力の構築
(対策7)安全証明、生産性向上、販路開拓などの支援
▽被災地での水産業の事業継続、拡大のための支援
・「がんばる漁業復興支援事業」の拡充
・種苗放流の支援強化
・漁業用機器設備の導入支援、新規就業者の確保や育成強化
・水産加工業の販路回復の促進支援
・販路拡大、経営力強化支援と安全実証への支援
・本県の水産消費地市場の支援
・福島相双復興推進機構の個別訪問による支援
・外食店や量販店、専門鮮魚店での販売促進支援
・EC、見本市での支援
▽農林業・商工業への対応
・被災地産品の積極的な利用を進めることによる国内販路の開拓支援
・JAPANブランド育成支援などを通じた海外の販路開拓の支援
▽被災地の観光誘客促進、交流人口拡大の支援
▽中小企業基盤整備機構やJETROへの特別相談窓口の設置、中小企業に対する復興支援アドバイザーの派遣など
◇風評に伴う需要変動に対応するセーフティーネット
(対策8)万一の需要減少に備えた機動的な対策
▽冷凍可能な水産物の一時買い取り、販路拡大に役立てる基金などの仕組みを構築
(対策9)なおも生じる風評被害について、被害者の立場に寄り添う賠償
▽期間、地域、業種を限定せず、立証の負担を被害者に一方的に寄せない、被害実態に見合った賠償
▽被害者に寄り添う体制の整備や相談窓口の開設、賠償方針の提示、賠償に関する紛争解決への対応
(対策10)将来技術の継続的な追求
▽トリチウムの分離技術の実用化について最新の技術動向を把握し、企業からの提案を受け付ける
▽汚染水発生量を減少させる取り組みを継続