新天地で孤立、定着に課題 楢葉、住民との交流拠点整備へ

 
移住者と地元住民の交流拠点施設が整備される旧南保育所

 東京電力福島第1原発事故で避難指示などが出た12市町村と国、県が連携して、帰還の動きが鈍い若い世代の人口回復に向けた移住施策を強化している。2020年度の12市町村への移住者らが過去最多となるなど効果が表れつつある一方で、地域になじめずに短期間で去ってしまうケースも目立ち始めた。新天地でいかに豊かな人間関係を築けるかが新たな課題として浮かび上がる中、楢葉町は移住者と地元住民が交流を深める拠点施設の整備を計画するなど、地域定着を支える取り組みをスタートさせた。

 被災地への移住促進を巡っては、政府が12市町村に移住する人に対し、最大200万円の支援金を支給する制度を創設するなど移住開始に向けた支援は手厚い。各市町村も引っ越し費用の一部負担など独自の施策を打ち出している。県によると、20年度に12市町村に新たに移住または二地域居住したのは155世帯で、19年度の115世帯から40世帯増え、調査を始めた06年度以降で過去最多となった。

 一方、双葉郡で移住促進などに取り組む団体のスタッフは「孤独感から1年未満で去ってしまう移住者もいた。移住促進に向けては雇用の創出や生活環境の充実が重視されがちだが、地域に溶け込んでもらう仕組みが必要」と訴える。

 県地域振興課は短期間で去ってしまった移住者数について「把握できていない」としながらも「地域の文化や慣習になじめなかったことや、思い描いていた生活の理想と現実のギャップに悩み、離れてしまう人はいる」と指摘した。

 楢葉町は「移住後に地域住民と接点を持てる場が少ない」と課題を分析し、交流拠点施設を整備する方針を固めた。来年度の開設を目指し、JR木戸駅から北に約500メートルの旧南保育所を改修して拠点施設として活用する。調理室を設けて地元の主婦による料理教室の開催や、地域のサークル活動に拠点を利用してもらうことで移住者と住民の交流を促す。移住者向けの市民大学講座を定期的に開いて地域性などについて学びを深めるプログラムを用意するほか、ビジネスなどで触れ合いの場となるコワーキングスペースを設置する。

 町によると、町内の居住者は4131人(7月31日現在)で、避難者を含めた人口に占める割合(町内居住率)は61.26%。避難指示が15年9月に解除され少しずつ住民は戻っているが、この1年の町内居住者の増加数は頭打ちの状況だ。町は本年度から年間80人強の移住者らを呼び込む目標を掲げており、町政策企画課は「交流拠点で絆を紡ぎ、定着できるよう後押ししたい」としている。