帰還へ住民思い複雑 復興拠点外の政府方針、避難先で生活定着も

 
道路を挟み、除染が進んだ復興拠点(右側)と住宅が残る拠点外=31日正午、浪江町末森、大堀両地区

 東京電力福島第1原発事故に伴う帰還困難区域のうち、特定復興再生拠点区域(復興拠点)から外れた地域の避難指示解除方針が31日、決まった。政府は2020年代に希望する住民の帰還を進めるが、避難者は帰還困難区域全域の除染の必要性を指摘するほか、避難先での生活が定着し、「家族の中でも帰還の思いは異なる」と複雑だ。

 まずは全域を除染し、古里を元の姿に戻すべきだ。帰るか帰らないかの判断はその後だ」。復興拠点に含まれていない富岡町の深谷行政区の副区長松本哲朗さん(68)は、政府が基本方針で示した「帰還に必要な箇所の除染を行う」の文言に首をかしげる。

 松本さんは8月28~30日の3日間、避難生活を送る郡山市から深谷行政区に一時帰宅した。道路には雑草が生い茂り、自宅は林の中に埋もれているような光景だった。「(基本方針は)帰還を希望しない住民の宅地は除染しないとも受け取れる。帰還しても、除染が行われずに荒廃が進む場所と隣り合わせで生活することになる」と危惧する。

 個別に把握するとした帰還意向の確認手法についても心境は複雑だ。「家族の中でも帰りたいかどうかの思いは異なる。避難先での生活が落ち着いた中、私自身は戻りたいが、妻はそうではないのかもしれない」

 復興拠点外に自宅がある双葉町の60代男性は「国がどれだけ本気なのかが分からない」と強調する。基本方針からは帰還困難区域全域を除染して避難指示を解除するという、国の強い決意が感じられなかった。

 避難指示が解除されれば、すぐにでも自宅に戻りたいが、帰還の意思が示されなかった建物などの取り扱いが分からない。「地元自治体と協議するという方針は分かるが、予算がなくて除染の範囲が狭まったり、除染しないということにはならないだろうか」と疑問視する。

 復興拠点の整備に伴う道路周辺の除染で自宅の除染が行われたにもかかわらず、拠点外のため帰還できない住民もいる。
 浪江町津島の赤宇木(あこうぎ)地区の石井絹江さん(69)の自宅は国道114号から20メートル以内にあり、政府が定める除染の範囲に含まれたが、石井さんは「帰れるのに帰れない」と嘆く。

 拠点外の赤宇木地区では、こうした道路周辺の除染に含まれない自宅も多く、すでに住民同士の思いが交錯しているという。この問題は赤宇木地区に限らず、復興拠点に隣接するほかの拠点外の地区でも起きているといい、石井さんは切実な思いを訴える。「国は一日も早く意向を確認し、皆が帰還できる環境を整えるべきだ。余生がいくら残っているか分からないが、早く津島に帰らせてほしい」