全国市長会長・立谷秀清氏に聞く 「在宅ケア」精度向上が課題

 
「積極的なPCR検査、感染者の隔離、ワクチン接種を進めることが大切だ」と話す立谷氏

 全国市長会長の立谷秀清相馬市長は福島民友新聞社の取材で、新型コロナウイルスに対する本県の医療体制について「在宅療養する人のケアの精度をどこまで上げられるかが課題だ」と指摘した。(聞き手 社長・編集主幹 中川俊哉)

 感染対策3原則の推進を

 ―ワクチン接種の進捗(しんちょく)状況をどう見ているか。
 「2回接種を終えたのは日本全体で半分程度。接種率は短期的に70%程度、長期的な最終目標として80%を目指すべきだが届いていない。ただ、高齢者の接種は進んでおり、感染者のうち高齢者の割合が以前と比べ極端に減っている。ワクチンの効果は間違いなくある。一方で高齢者の優先接種を始めた時と今とでは感染の質が異なるのも事実だ。(変異株の)デルタ株は極めて感染力が強い。人々の自粛疲れも相まって感染者が減らない状況にある」
 「相馬市では12歳以上の86%が2回接種を終えているが、相馬市の接種者が免疫を獲得したと推定される8月以降、17人の感染者が確認されている。うち7人は2回接種済みだった。2回接種済みの人の感染は非接種、または1回のみの接種者の感染と比較して10分の1程度に抑えられている。7人のうち2人は無症状で、5人が軽症。相馬市のデータで見る限り、サンプル数は少ないもののワクチンの効果を実感できる」

 ―本県の医療体制は。
 「医療の逼迫(ひっぱく)、ベッド不足が全国で叫ばれているが、相当地域差がある。東京都や大阪府は本当に逼迫し、野戦病院、つまり臨時医療施設の設置がすでに始まっている。本県の場合、感染者のうち約60%弱が無症状で、軽症が約20%、中等症も約20%、重症が数%。酸素投与が必要になるなど中等症以上の患者は入院しなくてはならないが、その人数と県が確保している病床とを比較すると、逼迫しているという状況にはない。中等症以上の患者が400人を超えるレベルになってくると、本県でも酸素ステーションの設置を考えなくてはいけなくなるだろう」
 「本県には、在宅療養者の健康管理をどうするかという問題がある。保健所のケアと医師の往診に頼っている部分が大きいと思うが、在宅療養する人のケアの精度をどこまで上げられるかが課題だ。感染で逼迫している地域の状況をつぶさに見ながら、本県の状況を考えていくということになると思う。感染対策の面では、積極的なPCR検査で感染者を見つけること、感染の連鎖を防ぐために感染者を隔離すること、ワクチン接種を速やかにできる限り広範に行うこと、この3原則を進めることが重要だ」

 ―接種を進めるために必要なことは何か。
 「今後、40~50代向け接種のスピードをどう上げるかが問題になると思う。さらに20~30代の接種に対する意識の問題も大きくなってくる。(20~30代に)副反応に対する嫌悪感などがあるためだ。こうした意識の問題に対しては情報公開をしっかりやることが重要だ。(接種後)発熱はかなりの高確率で起こる。ただ、相馬市でのワクチン接種後調査によると、アナフィラキシーショックの類いは極めて少ない。相馬市は市職員や高校生などの副反応を調べ、その情報を公開した。公開された情報を基に接種について判断してもらうことが大切だ」

 ―12歳未満の子どもへの接種についてどう考えるか。
 「12歳未満の子どもたちにとってワクチン接種のリスクがどれくらいあるのか、まだ分からない。厚生労働省の結論待ちだ。どういうルールで打っていくのかなど、有識者の間で議論して安全な方法を確立していくことになる。海外での状況などを踏まえて議論が行われると思う」

 ―人口の一定数以上が免疫を持つことで流行を防ぐ「集団免疫」を達成する可能性は。
 「集団免疫の考え方が果たして成立するのかどうか、分からない状況だ。ワクチン接種が進み、集団免疫が効果を発揮してもよさそうな国でも新たな感染が起きている。集団免疫を獲得できれば、ワクチンを打たない人も安心だという考え方は、少なくとも通用しなくなっていると思う」

 ―アフターコロナ時代に感染予防と経済の両立をどう図るか。
 「感染者が少なくなった時代の暮らし方とか経済活動の在り方とか、まだ答えが出ていない。国内版のワクチンパスポート、つまり接種済証を持つ人について制限を緩めるという話は、民間企業がすでに導入しているケースがあり、日本全体で少しずつ広がっている。行政主導となると公平性の問題もあり、今後の議論ということになる」

 3回目接種の効果研究へ

 ―今後求められる取り組みは。
 「3回目のワクチン接種の検討を始めるべきだ。一番早い時期に2回接種を終えている医療従事者の3回目接種を行う時期が迫っている。厚労省は3回目接種について正式に決めておらず、費用を国費で賄うのか、本人負担が発生するのかさえ決まっていない。これだけワクチンの普及を前提とした状況になってくると、2回接種をできるだけ早く行うとともに、3回目接種についてもしっかり準備していくことが大事になる。相馬市新型コロナウイルスワクチン接種メディカルセンターは、接種によって得られた抗体の量の推移を検証する研究に取り組む。坪倉正治福島医大教授による調査だ。抗体の量は自然減衰するので、例えば4月の接種で得た抗体が9月時点でどのくらい減衰したかを見る。自然減衰の状況が分かってから3回目接種を実施するのでは遅い。この研究では減衰した抗体が3回目接種によってどの程度回復するかを調べることも視野に入れている」