「なつかしい味」60年の歴史に幕 福島・菊原キッチンカロリー

 
60年間の感謝を伝える菊原猛さん(右)と美恵子さん

 「なつかしい味」で多くの人に愛され続けてきた福島市上町の洋食店「菊原キッチンカロリー」は17日、60年の歴史に幕を閉じた。店主の菊原猛(たけし)さん(81)は「山あり谷ありだったが、地元の人たちにかわいがられてやってこられた。長年、見守ってくれてありがとうございました」と感謝した。

 同店は、1960(昭和35)年に開店。山梨県出身の猛さんは、都内で料理人として修業した後、78年から2代目店主として腕を振るった。「自分が一人前になると同時にこの店も一人前にする」との思いで、修業時代に出会った妻美恵子さん(67)と二人三脚で店をもり立てた。

 「一度にたくさんの種類の洋食を食べてほしい」と考案したのが、人気メニューの「ゴールデンランチ」(800円)。大皿にカレーライス、ハンバーグ、白身魚のフライ、クリームコロッケがのったボリューム満点の一品で、「大人のお子様ランチ」と称され、地元の大学生やサラリーマンの胃袋を満たしてきた。

 2年前、猛さんに内臓の病気が見つかったが、「まだまだお客さんにおいしい洋食を味わってほしい。体が言うことを聞くまでは」と自らを奮い立たせ、今春まで厨房に立ち続けた。しかし、体調の悪化に新型コロナウイルスの感染拡大が重なり、閉店を決めた。

 最終日も常連客であふれ、客を迎える美恵子さんと猛さんの声が店内に大きく響いた。

 20年近く通った常連の阿部定子さん(69)は「席に座ると、たくさんの思い出がよみがえる。変わらない味と変わらない空間をありがとう」と涙ぐんだ。

 閉店に際し、猛さんは体が持つうちに美恵子さんと「旅行に行きたい」と希望を語る。美恵子さんは「料理の味を楽しむだけでなく、人との出会いもあった場所。感謝でいっぱい」と目を潤ませ、猛さんへ「まだ仲良くいようね」と言葉を送った。