過酷な被災、伝え方模索 震災・原子力災害伝承館開館1年

 
かつて双葉町で掲げられていた原子力推進の広報看板も新たな展示物に加わった=3月24日、双葉町・東日本大震災・原子力災害伝承館

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の記憶や教訓を伝える「東日本大震災・原子力災害伝承館」が双葉町に開館し、20日で1年を迎えた。コロナ禍であっても来館者数は試算を上回り、全国から6万人超が訪れた。伝承館は来館者などから寄せられた意見を踏まえて、開館以降に展示内容を見直し、県民が受けた被害の過酷さを明確に伝える試みを続けている。(浪江支局・渡辺晃平)

 ◆◇◇来館者想定超え

 「福島が経験した複合災害を二度と起こさないというのがわれわれの使命だ」。副館長の小林孝さん(51)は力を込めた。開館からの1年で、北海道から沖縄県まで各地から約6万5千人が訪れた。新型コロナウイルスの影響を除いた当初試算では年間5万人を見込んでいたが、想定を上回る結果となった。

 来館者の内訳を見ると、県内が7割を占める。県外は東京都など首都圏からが多く、次いで東北の各県からだった。教育旅行先として選ばれ、震災の記憶の薄い小中学生らが認識を深めたり、地元・双葉郡の人々が自らの被災体験を振り返る場として何度も来館する姿もあったという。

 ◇◆◇「教訓伝わらず」

 県外の来館者からは「福島で起きたことを知ることができた」と肯定的な意見が多かったが、県内の被災者からは「何を伝えようとしているのか、教訓が伝わってこない。もっと幅広く、深く伝えてほしい」「被災者の切実な叫びが聞きたい」などと厳しい指摘が寄せられた。

 指摘を受け、伝承館は今年3月に展示替えを行った。展示品を約30点追加して全体で約200点とし、レプリカではなく実物を増やした。原発事故により殺処分された葛尾村の牛の写真や、津波で車体がぐにゃりと曲がった消防車など、震災と原発事故による過酷さを伝える資料を加えた。

 表現の不足も補った。原発の「安全神話の崩壊」のコーナーでは「対策を怠った人災」との文言を書き足し、東電や国による津波への備えが不十分だったことに言及。「来館者が受ける刺激が強まった格好になった。被災者の苦難をより分かりやすく表そうとした」と小林さんは意図を語る。

 ◇◇◆イメージ払拭へ

 「浪江町にある道の駅なみえの海鮮丼がお薦めです」。伝承館職員の遠藤美来さん(19)が近くで昼食を取りたいと尋ねてきた隣県からの来館者にそう提案すると、思いも寄らぬ言葉が返ってきた。「食べて大丈夫なの?」。遠藤さんは返す言葉を失った。悪意が感じられなかっただけにショックは大きかった。

 「福島に対するネガティブイメージを払拭(ふっしょく)したい」。伝承館は今年5月、若手職員による語り部事業を始め、遠藤さんも加わった。いわき市で被災した遠藤さんは「福島のことを知ろうと思って来館する人たちが抱く福島への偏見や差別を、少しでも取り除いていきたい」と意気込む。

 職員は日々の業務を通して福島の今を伝えようとしている。