明治舞台の伝奇ロマン、元会津藩士が主人公の漫画 作者・相田裕さんに聞く

 
元会津藩士の春安は明治政府要人の暗殺計画に手を出すが、不死の力を持つ少女・シノが阻む。躍動感あふれるアクションシーンも魅力だ(©相田裕/白泉社)

 「元会津藩士」が主人公の一人として活躍する漫画「勇気あるものより散れ」の単行本第1巻が8月、白泉社から発売された。明治初期の東京を舞台に、戊辰戦争を生き延びた元藩士と「不死」の力を持つ少女たちの活劇を描く同作。歴史や生と死といった骨太なテーマを巡り展開するドラマ、躍動感あふれるアクションシーンが魅力だ。作者の相田裕さん(43)に制作の背景などを聞いた。

 ―会津藩士は県民にもなじみ深い。テーマや人物、舞台設定の経緯は。
 「まず『特殊能力を持つヒロインの少女が日本刀で戦う』というモチーフが浮かんだ。舞台は、伝奇的な要素を絡める上で新たな時代を迎えた明治初期が面白そうだなと。ヒロインの相棒となる男性キャラクターを考えたとき、幕末を経験した侍の物語はどうかとひらめいた。明治初期は武士という存在のたそがれの時代。幕末・戊辰戦争を謹厳実直に生きた会津藩士はふさわしいように思える。福島県は出身地の栃木県と隣県ということもあり、幼い頃に猪苗代湖へキャンプや雪遊びに連れて行ってもらった思い出があるので個人的な親しみもある」

 ―巻末に歴史作家による解説を入れたり、会津や薩摩言葉の監修者をつけるなど、細部へのこだわりを感じる。
 「純粋に、忠実に歴史を描くのではなく、本作のようなファンタジー要素のあるエンターテインメント作品の場合は、リアリティーをさほど重視しなくてもいいのかもしれない。それでも、フィクションだからこそ舞台の描写はリアルに。歴史や地方の言葉遣いを実在感があるように描きたい。歴史に興味がなかった人も物語に入っていけるよう脚注も付けた。楽しみながら知的好奇心も満たせるのは漫画の魅力の一つだ」

 ―作品冒頭に置かれた、シェークスピアの史劇「ジュリアス・シーザー」の引用が印象的だった。
 「作品の主題を最初に示した方が分かりやすくなるとも考えている。本作のタイトルの持つ意味は読み進めていくうちに鮮明になる予定だが、冒頭の引用はその手助けになればと思う。『ジュリアス・シーザー』はテーマとして適当でありつつ、日本とも明治時代とも関係のない距離感が面白いと思う」

 ―第2巻が来春ごろ発売予定だ。意気込みは。
 「1巻はまだ始まりでしかない。これからいろいろな登場人物が出てくるし、キャラクターの掘り下げも進む。もっともっと面白くなる。この時代は、知れば知るほどさまざまな立場の人が自分の信じる道を行き、ドラマを織りなしたんだということが分かる。胸を打たれるし、描く上で気持ちが入る。相田裕といえば本作、と言われるような作品にしたい」

 あいだ・ゆう 栃木県出身。明治大文学部卒。イラストレーターを経て2001年に商業誌デビュー。12年、「GUNSLINGER GIRL」(KADOKAWA)で第16回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。ほか代表作に「1518!イチゴーイチハチ!」(小学館)など。21年2月、月2回刊の漫画雑誌「ヤングアニマル」(白泉社)で「勇気あるものより散れ」を連載中。