公務員獣医師、確保進まず 福島県、畜産業や食品の安全担う

 
業務に当たる鈴木さん(右)と小川さん。家畜の伝染病予防は重要な役割の一つだ=県北家畜保健衛生所

 来春採用予定の県職員を巡り、一般事務に加えて各種専門知識を持った職員が必要とされる中、畜産業や食品の安全を支える獣医師の確保が進まない。既に3人の採用を内定したものの、改めて13人程度を募集する"非常事態"だ。新型コロナウイルス感染症の影響で全国の獣医系学部への働き掛けもままならず、県は「公務員獣医師」の役割と魅力を発信しながら、人材確保に向けた取り組みを模索している。

家畜を守る役割

 「県内の農場では豚熱が発生していない。防疫がある程度できている」。県北家畜保健衛生所に勤務し2年目を迎えた獣医師の鈴木桃香さん(26)は胸を張る。県内の野生イノシシから豚熱の感染が確認された昨年9月以降、農場でのワクチン接種に取り組んできた。「今も月の3分の1はワクチン接種」。一つの農場に月2回は訪れるといい、畜産農家との触れ合いも楽しみの一つだ。

 衛生所は豚をはじめ鶏や牛などの家畜を伝染病から守る役割がある。今春採用された獣医師の小川彩香さん(28)は動物病院からの転職組。鶏の担当として高病原性鳥インフルエンザのモニタリングなどに取り組む。「大学時代は仕事の魅力が分かっていなかった。目立たないかもしれないが、畜産を支える上でなくてはならない仕事」と話す。

県、採用へ注力

 県によると、農林水産、保健福祉両部を合わせて約90人の獣医師が本庁や家畜保健衛生所のほか、食肉衛生検査所、動物愛護センターなどで勤務している。通常業務だけでなく、昨年の豚熱のように伝染病予防など迅速な対応を求められる場面も多いが、多くの部署で欠員が生じているのが実態だ。

 だが、新規採用は思うように進んでいない。県は例年、10人前後を募集しているが、2020年度は2人、19年度は4人、18年度は3人の採用にとどまった。本年度も厳しい状況は変わらない。

 人材確保に向け、県は獣医学生を本県に招き体験研修を実施してきたが、新型コロナの影響で昨年度は中止した。本年度も予算は確保しているものの、実現できるかは不透明だ。それを踏まえ、県は募集期間中の今月28日と10月7日にオンライン説明会を初めて企画。全国15大学の獣医学生に本県勤務の魅力を発信する。

動物病院と競合

 「目の前の動物に対するケアだけでなく、身に付けた知識を公に広く還元できる」。今春まで動物愛護センターに勤務した獣医師の川島武人さん(31)=食品生活衛生課=は公衆衛生を担う意義を強調する。

 獣医系学部を持つ大学が少ないことに加え、学生の多くは動物病院などへの就職を志すだけに、各自治体間で獣医師の「奪い合い」となっている。「説明会で若い獣医師に意義や魅力、使命を伝えてもらい、人材確保につなげたい」(食品生活衛生課)。コロナ禍でも、本県の家畜や食品の安全を支える担い手を確保するための取り組みが問われている。(報道部・飯沢賢一)

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来春採用予定、10月18日まで募集

 来年4月採用予定の獣医師の募集は10月18日まで。受験資格は1975(昭和50)年4月2日以降に生まれた人で、既に獣医師免許を持つ場合は前倒しで採用される可能性がある。試験日は10月27日。獣医師のほか、職業訓練指導員(機械、1人程度)と船舶(航海、2人程度)も募集している。問い合わせは県人事課(電話024・521・7033)へ。