課題山積「岸田さん頼みます」 福島県民、新総裁の手腕を注視

 
店内のテレビで岸田氏の会見の様子を見る細谷さん。「コロナ対策と経済対策を」と語る=29日午後6時すぎ、福島市・ビストロ・ミカサ

 29日に自民党新総裁に選出された岸田文雄氏は10月4日の臨時国会で第100代首相に指名される。記者会見で「丁寧で寛容な政治を行う」と国民の声を聴きながら政策を進める姿勢を強調した岸田氏。新型コロナウイルス感染症対策と疲弊した経済、産業の再生、東日本大震災、原発事故からの復興など山積する課題にどう挑むのか。県民は手腕を注視する。

 新型コロナ「効果的対策、真っ先に」

 「真っ先にお願いしたいのは効果的なコロナ対策と手厚い経済対策だよな」。福島市置賜町で約40年営業するポークソテーなどが人気の洋食店「ビストロ・ミカサ」の細谷光孝さん(68)は、記者会見のテレビ中継を見つめながら語った。

 コロナ禍で街なかのにぎわいが減り、飲食店は苦境に立つ。「今は団体客は来ない。周辺の店で閉店が相次ぎ、街自体も暗い。コロナとの我慢比べはいつまで続くのか」。店だけでなく音楽イベントで街を盛り上げてきた自負があり「コロナに負けてはいられない。街が元気になる取り組みが必要」と訴える。

 会津若松市の割烹(かっぽう)・会津料理「田季野」の女将(おかみ)馬場由紀子さん(52)は「昨年の『Go Toトラベル』の効果は絶大だった。宿泊客が増えれば観光地全体に人の動きが出る。またお願いしたい」と期待する。ここ数日で修学旅行の予約が次々と入り始めたが一般団体客の動きはまだ鈍い。「動向を見て高速道の土日祝日割引の復活など交通面の手厚い支援も希望する」と話す。

 郡山市などで人材ビジネス会社を経営する鈴木康博さん(47)は、労働力不足が深刻だとして「東京一極集中を是正するため実効性のあるIターン、Uターン政策を求める。年金や医療費などの問題に対策を打ち、安心して働ける環境を整えてほしい」と望む。国見町の農家赤坂正弘さん(64)は「農業の機械化や先端技術のサイクルは早く、対応できていない農家が多い。スマート農業など特色ある農業に光を当て米価安定や後継者問題にも取り組んでほしい」と訴えた。

 処理水「国民の声を反映して」

 被災地からも期待と注文の声が上がる。富岡町の会社員小松博和さん(39)は「町内で生活する若い世代はいまだ少ない」と将来を心配する。町内で暮らす住民は1755人(9月1日現在)で避難者を含む人口の約15%。「岸田さんは『国民の声を聴く』という姿勢を重視している。被災地の声に耳を傾け、若い世代の人口増にどう取り組むか注目したい」と話した。

 東京電力福島第1原発で発生する処理水の海洋放出方針を巡り岸田氏は総裁選の討論で「地元に納得してもらう努力が重要だ」とした。いわき市漁協組合長の江川章さん(74)は「説明不足のまま海洋放出が進めば、後継者はいなくなる。国民の声をしっかりと反映し、処理水の問題を改めて考えてほしい」と注文する。浪江町行政区長会長の佐藤秀三さん(76)は「政治家は処理水や風評など復興の課題を言葉にするだけでなく、実行力が試されている」と強調する。