「DNA」被ばく影響なし 帰還困難区域、周辺のイノシシやヘビ

 
地元ハンターによって捕らえられ、調査が行われたイノシシ=2017年、浪江町(福島大提供)

 福島大環境放射能研究所の研究者らが、東京電力福島第1原発事故の帰還困難区域とその周辺に生息するイノシシとヘビの染色体を調べた結果、原発事故の被ばくによるDNAの損傷などの悪影響は確認できなかったとの研究成果をまとめた。研究チームは「原発事故により慢性的に低線量被ばくをする状況でも、これらの野生動物が問題なく生息していることを示している」としている。

 国際雑誌エンバイロメント・インターナショナル10月号に発表した。同研究所のトーマス・ヒントン客員教授(67)のほか米コロラド州立大、米ジョージア大の研究者らが低線量被ばくが野生動物に与える影響を調査し、特に生理機能が比較的人間に近いイノシシと、地表や樹上といった放射性物質がある場所に接触しているヘビ(アオダイショウ)に着目した。

 2016~18年、帰還困難区域の浪江町や大熊町、双葉町、さらにその周辺で捕獲されたイノシシ45個体、また浪江町などで捕獲されたヘビ20個体を調査。イノシシを捕獲した地域の空間線量は平均毎時4.4マイクロシーベルト、ヘビは平均毎時2.4マイクロシーベルトだった。

 動物から血液を採取し、放射線によって切断された染色体が誤って修復された時に起こる染色体の異常で、DNA損傷の指標となる「二動原体染色体」の割合や、放射線による環境ストレスなどで長さが短くなることが知られている染色体末端部「テロメア」の長さを調べた。

 その結果、イノシシについて、二動原体染色体の被ばくに伴う増加は確認できなかった。また、イノシシとヘビのテロメアの長さも、被ばくで変化したことは確認できなかった。

 このほか、ストレスがかかると上昇することが知られているホルモン「コルチゾール」も調べたが、帰還困難区域内に生息するイノシシは値が低かった。人間によるストレスがなかったためと考えられるという。

 研究チームに加わった福島大環境放射能研究所の石庭寛子特任助教(41)は「調査期間や動物の種類など限定された範囲ではあるが、放射線による健康影響が見られないという一定の結論を見いだすことができた」と意義を語った。