トラフグ水揚げ急増、相双沖に「福」来たる 新たな特産、誘客に

 
漁船から水揚げされる天然のトラフグ=相馬市・松川浦漁港

 高級魚の代名詞、天然トラフグの水揚げが、相馬市の松川浦漁港など相双地区の港で近年大幅に増えている。トラフグ漁に携わる漁船が所属する相馬双葉漁協は、資源保護に努めながら安定した漁獲量を確保し、相双沖の新たな特産に育てたい考えだ。震災や新型コロナ禍で打撃を受ける地元の観光関係者も「誘客の柱になる」と熱視線を送る。

 相双沖で漁師がトラフグの姿をよく目にするようになったのは4、5年ほど前だった。トラフグは日本沿岸に広く分布しており、これまでもまれに水揚げされていた。しかし、近年はカレイの刺し網やシラスの船引き網にかかる数量が増えていた。

 こうした状況を受け、2019年にトラフグに狙いを絞ったはえ縄漁を始めると、相馬~請戸沖の漁獲量は格段に増加した。19年は9~12月で1.94トンの水揚げを記録し、翌20年は同期で5.04トンになった。今年は9月1~28日だけで3.41トンまで伸びている。漁に携わる漁船も次第に増え、漁協は今年から、捕獲できるトラフグの大きさに制限を設けた。予想外の大漁に、漁師の多くは「海水温が上昇したためでは」と推測するが、県水産資源研究所(相馬市)は、詳しい理由は分かっていないとしている。

 天然トラフグの動向に詳しい山口県水産研究センターによると、全国的に天然物の水揚げ量は減少傾向が続いている。相双沖での漁獲量について担当者は「山口県側の瀬戸内海でも5トン取れればいい方。それに匹敵する量だ」と驚く。

 一方、相双沖で取れた天然トラフグの価格は抑え気味。1キロ当たりの平均単価は19年で3268円、翌年は2783円だった。多くは県外に流通しているとみられる。トラフグの取り扱いが全国で最も多いとされる南風泊(はえどまり)市場(山口県下関市)での天然物の1キロ当たりの相場(9月30日時点)は7500~1万3000円で、年末に向けてさらに上昇していくという。価格の違いは、両者の歴史の差でもある。長くフグに親しんできた下関では専門の仲卸業や加工業が発展してブランド力もあり、高価格を維持できる仕組みが整っている。

 トラフグ漁に携わる相馬市の漁師鈴木日出男さん(47)は「トラフグといえば、トップクラスの魚。ブランド化を目指していきたい。価格も上向いてくれれば」と期待する。

 相馬市の松川浦で観光ホテル「喜楽荘」を経営する只野光一さん(70)は「市内でトラフグを出している旅館はないはず」と話す。調理が許可される「フグ取扱者」がいる市内の宿泊施設も限られている。だが、只野さんは「天然トラフグのインパクトは絶大。お客さんを呼ぶための目玉になる。安定して手に入ると分かれば、取扱者になろうという人がすぐに増えるはずだ」と注目する。