「学び直しの場を」夜間中学設置に期待 福島県教委が支援検討

 
鈴木さん(左)に指導する清野さん

 義務教育を十分に受けられなかった人や外国人らが学ぶ「夜間中学」の県内初の設置に向けた期待が高まりそうだ。県教委は、市町村が公立の夜間中学を設置する際の費用を一部支援する方向で検討しており、設置を望む県民は「不登校になった人たちが改めて学べる環境があるのは素晴らしい」と重要性を強調する。

 仕事帰りの会社員が目立ち始めた午後6時。福島市のアオウゼには小、中学の教科書を広げて学び直す6人の大人がいた。鈴木直幸さん(44)=郡山市=もその一人。机に向かい、熱心に漢字を書き取り。電車で片道1時間かけた通学も今年で4年目となった。

 鈴木さんが通うのは、「福島に公立夜間中学をつくる会(福島市)」が月2回開く自主夜間中学の勉強会。大人の学び直しの場として開催され、「生徒」は20~80代の約15人に上る。

 小学生から特に国語が嫌いで、人とコミュニケーションを取ることが苦手だった鈴木さん。高卒後に就職したが、事務職として書類の整理を行う際に漢字が読めなかったり、言葉の意味が分からなかったりして仕事に時間がかかることが多かった。

 勉強してこなかった自身を悔やみ、勉強会に参加。今では読める漢字も多くなり、自信を持って人と話すことができるようになった。「普通に勉強するだけではなく、家族には言えないような相談を講師の方に聞いてもらっている」。県教委の支援の動きも「無料で学べることは本当にありがたい」と歓迎する。

 鈴木さんに国語を中心に教えている講師の清野治己さん(75)は「どちらが生徒かなんて関係ない。皆で学んでいくことが大切」と指摘する。定年まで広告代理店で働き、1993(平成5)年に放映された映画「学校」を見て夜間教育に興味を持った。「勉強できない子が置いていかれたままになっているのはおかしい。誰もが自分のペースで学べるような場を、もっとつくってほしい」。県内初の設置に向け、清野さんは自治体の動きが加速することを願っている。

 福島駅前自主夜間中学は福島市のアオウゼで月に2回、主に金曜日に開校。時間は午後6~同8時。受講無料。問い合わせは福島に公立夜間中学をつくる会大谷一代さん(電話090・2025・5287)へ。

設置後押しへセミナー

 県教委は、夜間中学設置に向け7月に開いた検討委員会で、2023、24年度の2年間で夜間中学の設置を重点的に進める方針を示している。開校前の1年間、パソコンなどの費用の一部を負担するほか、非常勤講師ら定数外教職員の配置支援を検討。空き教室が確保できない場合、県の施設を貸し出すことも想定する。

 県教委によると、現時点ではまだ設置に向けて動きだしている市町村はなく、長期的なニーズが把握できないことや施設の確保、予算の見通しが立たないことなどが要因という。

 このため県教委は11月に2回目の検討委を開くほか、10月下旬には自治体関係者や地域住民に向けたセミナーを開催する予定で、夜間中学の設置を後押しする考えだ。

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 夜間中学 戦後の混乱や不登校など、さまざまな理由で義務教育を十分に受けられなかった人や外国人らが通う公立中学校。大人の学び直しの場として注目されている。文部科学省は各都道府県に少なくとも1校が設置されるよう進めており、12都府県に36校が設置されているが、県内にはない。授業料は無料で、全課程を修了すると中学校卒業の資格が得られる。